読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/sports/koshien/20240201-OYT1T50239/
2024/02/03 08:10

前橋育英高が2013年の夏の甲子園で優勝した時のナインで、プロ野球独立リーグ・BCリーグでも活躍した工藤陽平さん(27)が昨年春、下仁田町にある実家の「 中之嶽なかのたけ 神社」の神職として再出発した。高齢化率日本一の南牧村の神社でも祭事に携わっており、「衰退している地域の神社を守りたい」と励んでいる。

1月19日、コンニャク生産者ら約100人が見守る中、工藤さんは奉納行事で宮司の補佐役を務め、横笛の 龍笛りゅうてき で雅楽を奏でた。「大きな神事は初めてで緊張しました」と、ほっとした表情を浮かべた。

工藤さんは、宮司の父・貴弘さん(58)から3歳の誕生日にグラブを贈られたのがきっかけで野球を始めた。

進学した前橋育英高では2年生の夏、チームメートだった高橋光成投手(埼玉西武ライオンズ)らと甲子園に初出場。本塁打を放ったほか、チーム最高打率を記録するなど優勝に大きく貢献した。夏の甲子園では22年ぶりの初出場Vの快挙となり話題をさらった。

工藤さんは大学野球を経て、BCリーグ「群馬ダイヤモンドペガサス」に入団した。主将として臨んだ21年には、チームを同リーグ優勝に導いた。

一方で、ペガサスでプレーしながら、貴弘さんが宮司を兼務する神社を一緒に回った。「アルバイトのつもり」だったが、各地域で氏子が高齢化して神社が衰退し、少ない神職で多くの神社を支えている現状を目の当たりにした。

兄の大周さん(29)が宮司を補佐する 禰宜ねぎ になり、自身も「野球しかない人生だったが、自分も地域の役に立ちたい」と考えた。大学で学び直し、神主の資格を取り、23年4月に権禰宜に就いた。

中之嶽神社には、正月と夏の高校野球県大会に合わせ、前橋育英高の野球部が必勝祈願に訪れる。工藤さんは「また違う立場で、野球に打ち込む選手の力になりたい」と話している。