ただ、すべての現場がそうでないことはよくわかっています。

実現しなかった映像化プロジェクトの中には、映画プロデューサーがミステリ作家である私に

「ミステリ要素とかはいらないんで恋愛映画にしましょう。そうしたら売れますよ。あなたの作品をこっちでうまく変えて映像化してあげます」

という信じられない発言をして、その場で交渉を打ち切ったなどという苦い経験もあります。

自分が生み出した大切な作品をないがしろにされ、勝手に意に沿わない改変されることに対する原作者の苦しみは痛いほど理解できます。

原作者にとって自らが苦しみ、悩みぬいてゼロから生み出した作品は、我が子のように大切なものです。

自分の作品を映像化することは、よく「娘を嫁に出すようなものだ」と例えられます。

その作品に込められた自分の『想い』が踏みにじられたら、
多くの原作者は身を裂かれるような苦しみをおぼえます。

映像化にかかわる方々、とくにプロデューサーの皆様は、そのことを心の隅に留めていただき、できれば原作者と前もって密にコミュニケーションをとって、
どうすればその作品をよりよくできるのか、しっかりと話し合って信頼関係を築いていただきたいです。