サッカーのアジア王者を決めるAFCアジアカップカタール2023が幕を開けた。1月14日(日本時間)の初戦では、かつての指揮官、フィリップ・トルシエ監督率いるベトナム代表と対戦し、一時は逆転を許したものの、4対2で辛勝を収めた。

 続く19日には、イラク代表と対戦。日本優位に進むと思われた試合だったが、開始間もない前半5分にアイマン・フセインのヘディングで先制されると、前半49分にも再びアイマンに追加点を許し、終始押し込まれた前半を2対0で折り返した。

地上波での放送は4試合のみ

 2022年冬のカタールW杯では、過去に優勝経験のあるドイツ代表とスペイン代表を撃破してベスト16入りを果たすなど日本サッカーは目覚ましい躍進を遂げている。だが、その上昇気流のような勢いに影を落としているのが放映権料に関する問題だ。

放映権料高騰の波は、長引く景気低迷や円安に苦しむ日本にも押し寄せ、日に日にその影響は色濃くなっている。昨年は、放映権の交渉難航を受けて女子W杯の放映が直前まで不透明な状態となり、11月に行われた男子日本代表のW杯アジア2次予選のシリア戦で試合中継が見送られたことも記憶に新しい。

 新年早々に幕を開けた今回のアジアカップは、DAZNが日本代表戦を含む全51試合をライブ中継することが決まっている。だが、地上波での放送は、予選リーグのイラク戦と準々決勝以降の4試合に限られる。
日頃からスポーツに触れる機会が少ない“一般層”が代表戦を観る機会を失う可能性が指摘されており、こうした状況が続けば、子どもたちをはじめとする新規ファンの獲得に悪影響を及ぼし、将来的なサッカー人気の低迷を引き起こす要因になるのではないかといった意見も一部からは漏れ聞こえる。

今年2月から「月額4200円」に値上げ

 一方で、昨年のシリア戦と大きく異なるのは、DAZNに加入すれば大会の全試合を楽しめるという点だ。これは試合を楽しみにしているサッカーファンにとっては“朗報”と言っても良いだろう。

 2016年に日本でサービスを開始したDAZNは、Jリーグや海外サッカー、そしてプロ野球といったさまざまなスポーツコンテンツの配信を通じ、スポーツファンの生活に欠かせない存在に成長した。

 とはいえ、当初は月額1925円(税込)だった会費は高騰を続け、現在は3700円(税込)。今年2月14日からは、3年連続の値上げが敢行されて月額4200円(税込)に改定されるなど、懐へのダメージは小さくない。
ましてや日頃サッカーに馴染みのない方々にとっては決して安くない出費であり、ライブ観戦そのものを諦めてしまう可能性も十分に考えられるだろう。現状を踏まえると、今後の更なる値上げによって試合観戦のハードルが一層高くなることも懸念される。

コロナ禍で膨らんだ「日本サッカー協会」の赤字

 2022年3月に日本サッカー協会は、東京都文京区にあるJFAビルの売却を発表し、その売却額は100億以上と報道された。「赤字を埋める売却ではない」ことがしきりに言われていたが、慣れ親しんだオフィスを手放さざるを得なかった背景には、コロナ禍に端を発する赤字の影響があると言わざるを得ないだろう。

 日本サッカー協会が発表している2023年の「収支予算書内訳表」を見ると、経常収益は約200億円。収入の大部分は、スポンサー契約を結んだ企業からの協賛金やグッズのライセンス収入から構成される「事業関連収益」(約103.4億円)と、チケット代や放映権料などに該当する「代表関連事業収益」(約26.6億円)だ。

一方で、コロナ禍の影響によりW杯アジア予選や国内での親善試合が開催出来なかった2020年の収入は、当初見込みから49億円少ない146.6億円で、約11億円の赤字を計上し、放映権とチケット収入に依存してきた状況が浮き彫りになった形だ。

 2023年度予算(2023年12月発表)では、JFAビル売却などにより過去最高の292億円の収支を記録し、約67億円の黒字を計上した。だが現状は、コロナ禍による赤字の穴埋めと、新たなビジネスモデルの構築も含めた事業の立て直しを図っている状況にあると言えそうだ。
もはや世界の強豪国と互角以上の勝負を繰り広げられるようになった日本代表だが、選手の強化や底上げが進む一方で、地上波での試合放映の減少や主催試合におけるスター選手の不在といった状況は、やむを得ない部分はあるにせよ、ビジネスの主軸を担ってきた放映権料やチケット収入に影響を及ぼしかねない不安材料と言えるだろう

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1/24(水) 6:00配信 デイリー新潮
https://news.yahoo.co.jp/articles/1812831dc67bcef2cc7e164d4eaecd0793dd8809