・箱根駅伝5区と6区にあるチェックポイント「函嶺洞門」は2014年を最後に選手が通らなくなった。
・車道の幅が狭く渋滞発生の原因となっていたため、函嶺洞門を迂回するバイパスが建設されたからだ。
・立ち入りができなくなった函嶺洞門だが、2024年の箱根駅伝第100回を記念して、1週間だけ一般公開される。

 1月2日、3日に行われる箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)は、2024年に第100回を迎える。それにあわせて閉鎖されていた「函嶺洞門(かんれいどうもん、神奈川県箱根町)」が1週間だけ一般公開される(神奈川県のWebページ)。

 ■一般公開日程
2024年1月2日 14時頃(※)から16時
2024年1月3日 10時頃(※)から16時
2024年1月4日から8日 9時から16時
※箱根駅伝の最終ランナーが現地通過後。状況により前後する可能性あり

 箱根駅伝のファンなら「山登りの5区」にある「函嶺洞門」に見覚えがあるだろう。さらに、「コースが変更され、函嶺洞門を通らなくなった」ということもご存じかもしれない。今回は、その後立ち入りができなくなっていた函嶺洞門に入り、往年のレースを懐かしむ二度とない(? )チャンスなのだ。

■ 2014年を最後に通行止めに

 箱根駅伝は、東京・大手町から箱根・芦ノ湖までの約100kmを往路復路それぞれ5区間に分け、10人の選手が2日間で走りぬく。4区から5区にたすきリレーされる小田原中継所から3.6kmの地点が「函嶺洞門」だ。

 函嶺洞門は1931年(昭和6年)に、落石防護用の洞門(半開放のトンネル)として造られた。

 ※函嶺洞門の建設にいたった背景と詳しい経緯については、次の記事を参照してほしい。
 
 箱根駅伝5区が函嶺洞門を通過しなくなった理由 このままでは歴史的建造物がいずれ廃墟に(2022/1/1)

 ところが時代が進んで、国道の交通量が増えると、道幅の狭さ(5.8m)が課題となってきた。カーブした洞門内では大型バスのすれ違いが難しく、定常的な渋滞発生の原因となっていたようだ。

 さらに2005年(平成17年)には台風によって坑口近くで土砂の崩落が発生するなど、安全面での対策も求められていた。

 このため、函嶺洞門を迂回するバイパスが建設され、2014年2月、函嶺洞門は通行止めとなった。

■ 現在は立ち入りできない状態に

 その後どうなったのか。次の写真は2021年11月に、現地で撮影したものだ。

 函嶺洞門へ続いていた道路周辺は網のフェンスで囲まれていて、中に立ち入ることはできない。人も車も通らなくなった道路は、舗装を突き抜けて背の高い雑草が生えていた。

 2015年からは、箱根駅伝の選手も新しいバイパスを走るようになった。コースが20m長くなったので、2014年以前の記録は参考記録扱いとなってしまったが、チェックポイントの場所と呼び名「函嶺洞門」はその後も引き継がれている。

 今回の一般公開は、函嶺洞門の堂々とした佇まいを味わう絶好のチャンスだ。通行止めになってちょうど10年。その間にどれぐらいの経年変化があっただろうか?  機会があれば公開期間中に足を運んで確かめてほしい。

 ところで、この一般公開は1回限りで終わってしまうのだろうか。

 2021年に現地に行ったときには、固定式のフェンスが設置されており、「このまま放置されてしまうのか?」と心配になった。だが、どうも“1回限り”ではないかもしれないのだ。函嶺洞門の今後の運命については、近々お伝えしたい。

牧村 あきこ

「JBpress」2023.12.25(月)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78577