日本のネオアコブームに大きな影響を与えたベン・ワットの『ノース・マリン・ドライブ』
12/24(日) 18:00 OKMusic
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ベン・ワットの『ノース・マリン・ドライブ』
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OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。70年代後半から始まるポストパンク時代には、ニューウェイブ、スカリバイバル、エスノロック、ダブ、シンセポップなど、さまざまなスタイルの新しい音楽が生まれたが、それらは大手レコード会社では扱いにくいアイテムであり(売れるかどうか分からない)、小回りの利くインディーレーベルからリリースされることが多かった。80年初頭のイギリスで、インディーズのチェリーレッドからリリースされた廉価盤のコンピレーション『ピロウズ・アンド・プレイヤーズ』(‘82)が大ヒット、83年1月にNME誌のインディーズチャートの1位となる。このアルバムは3月になっても1位をキープした上、3位には同レーベルの『遠い渚』(トレーシー・ソーン)、5位にもチェリーレッドの『ノース・マリン・ドライブ』(ベン・ワット)が入るという快挙となった。『遠い渚』も『ノース・マリン・ドライブ』もほぼ生ギターが中心の作品で、この新たなアコースティックサウンドは日本でも話題となり、後のネオアコや渋谷系サウンドに大きな影響を与えたのである。そんなわけで今回はベン・ワットの『ノース・マリン・ドライブ』を取り上げる。
※本稿は2019年に掲載

■新世代のフォーク風ロック

1981年にデビューしたスコットランド出身のアズテック・カメラはポストパンクの中でも、フォーク風ロックというシンプルなスタイルで目を引いたグループだ。

(※中略)

■ネオアコのサウンド

80年代のブリティッシュ産フォーク風ロック(ネオアコ)は、基本的に寂寥感のあるヴォーカルと涼しげ(寒々とした)なギターが特徴である。生ギターを中心にリズムギター(エレキ)、ベース、ドラム、キーボードなどが入る場合は多いが、前面に出るのは生ギターであることが多い。サウンドとしてはアメリカのフォークロックとは違ってフォーク、カントリー、ブルースの影響は少なく、パンク的でどちらかと言えばダークな感覚を持つ。

■ベン・ワットについて

ところが、ベン・ワットは生ギター1本(ピアノが入ることもある)で勝負した。普通、高度な技術を要求されるので、生ギター1本で演奏するのは難しい。特にパンクでスタートしているアーティストの場合には、高度な技術を磨くことは苦手なので、バンド系で演奏することが多い。ワットはポストパンクのアーティストであるものの、父親がジャズバンドのリーダーでアレンジも手がけるアーティストであったため、幼少期から音楽を学んでいた。だから、ボサノバやジャズ的なバックボーンを持っているのだ。

ワットはデビュー当時のインタビュー(NME誌)で、ドアーズ、ザ・ジャム、ジョイ・ディビジョン、アズテック・カメラ、ロバート・ワイアット、バーズ、ビリー・ホリデイなどに影響されたと答えている。これを見るとフォークロックからパンクやジャズまで、さまざまな音楽が彼の糧となっている。そして、寂寥感のあるヴォーカルはどうやらロバート・ワイアット譲りのようだ。

(※中略)

■本作『ノース・マリン・ドライブ』について

83年にリリースされた、ワットの記念すべきデビューアルバム。収録曲は全部で9曲。1曲(ボブ・ディラン作)を除いて、全てオリジナルである。基本的にはエフェクター(コーラス、フランジャー)を通した生ギターだけでの演奏(ギターは多重録り)で、曲によってはアルトサックス(演奏はブリティッシュジャズ界のベテラン、ピーター・キング)がソロを取る。アルバム全編を貫く寂寥感のある静謐さは、聴いていると何物にも代えがたい幸福感に浸ることができる。僕は本作を聴く時、一曲一曲を聴くというよりはアルバムの持つ全体的な雰囲気を味わうことが多い。とはいえ、どの曲も完成度は高く、特にボサノバタッチの曲での彼のヴォーカルやギタープレイは素晴らしい。結局、本作は『ピロウズ・アンド・プレイヤーズ』と入れ替わるように、インディーチャートで1位となった。

(※以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)

TEXT:河崎直人