「今でも香港が大好き。でも、この3年間で祖国は恐怖の場所になってしまった」

FRIDAYの取材にこう明かすのは、’14年から香港の民主化を求める「雨傘運動」を先導した周庭(英名アグネス・チョウ)さん(27)。″香港民主化運動の女神″と呼ばれた彼女は12月初旬、「留学先のカナダ・トロントにとどまる。祖国の香港に戻らない」と自身のSNSに投稿した。

国家安全維持法違反の容疑で’20年8月に香港警察に逮捕、収監された後、彼女が3年間にわたって沈黙を守っていた理由は言論の弾圧にあった。

「’20年の国安法の施行以降、言論規制はどんどん厳しくなり、政府へ反対意見を言うことは一切禁止となりました。SNSで意見を述べただけで逮捕された人もいます。民主的なごく普通の生活が、香港では出来なくなった」

’21年6月の釈放後、周さんには3ヵ月に1度の尋問のような取り調べが行われ、仕事を見つけるのも一苦労だった。そんな生活は徐々に心身を蝕んでいく。

「恐怖や不安が消えず、PTSDに不安障害、パニック障害を患い、今も投薬、セラピーが必要な状況が続いています。当時の環境自体が病気の原因だったので、根本から変えないといけなかった。
9月に香港から出国したのですが、パスポートを取り戻すにあたり、条件として愛国教育を強制され、中国の愛国展覧会に参加させられたこともツラかった」

流暢な日本語を操る周さんは、襷坂46の楽曲が収監生活の支えだったと明かすなど、日本のアイドル好きとしても知られる。この3年間では、日本のアニメへの造詣も深くなり、ある作品の存在が彼女の決断を後押ししたという。

「出国に際して警察との交渉を迫られ、’23年は私にとってすごく苦しい一年でしたが、その中でずっと考えていたのが『どうやったら自由に向かうことが出来るのか』でした。この3年間、私には自由がなかった。その中で、アニメ『進撃の巨人』に出会い、自分の″影″を重ねていました。主人公たちは物語の中で、壁の外に出るために戦い続けます。

アニメの最終回を観て、『進撃の巨人』の本質的なメッセージは『自由を求める戦い』だったんだと改めて感じ、勇気づけられたのです。日本の皆さんに、自由に生きる権利があることは、実は当たり前ではないと知ってほしい。その上で、香港に関心を持って頂けると嬉しいです」

自由を求め、周庭さんは遠く離れたカナダの地で祖国の未来を憂えている。

『FRIDAY』2023年12月29日号より

https://news.yahoo.co.jp/articles/c604fc99cda761e69c9cc914d252436367079df7