将棋マンガの最高傑作は堂上まさ志「燃えろ!一歩(いちふ)」

母一人子一人の主人公・一歩少年は小学校低学年で奨励会に入り、
絶対に勝てる究極の戦法「完全将棋」を生み出す。
ライバルや先人を次々に破り名人戦を迎えるまでになったが、母親が危篤に。
ところが周囲はそれを隠したため一歩少年は知るよしもなく名人戦に臨む。
勝利し喜び勇んで古郷に戻ると母親は既に死亡していた。
看取れなかった後悔から、一歩少年は2度と将棋駒を手にしなくなった…

という、悲しくて重たい展開で終わる。
なのに母親の墓前に手を合わせるラストシーンでは、
学生服姿に成長した一歩青年が将棋への感謝と良き思い出を語るかのように清々しい笑顔をしていて、「大いなる肯定論」で締めくくられる。
それは、「完全将棋」が存在すると競技そのものが成り立たなくなるので引退することで封印した、「ソクラテスの態度」から来るものなのか?

母親の死と将棋の死を背負ってしまった一歩少年から、ズシリと重くて深い読後感が伝わる名作!