※文春野球コラム ペナントレース2023
中島 大輔20時間前

 西武は「ぬるい」――。

 今年2月上旬、平石洋介ヘッドコーチ(以下HC)が『web Sportiva』のインタビューに対し、西武の体質を忌憚なく語った内容に驚かされた。打撃コーチとしてやって来た前年の秋季キャンプ後、まるで同じセリフを口にしたと、彼に近い編集者から聞いたからだ。オフレコの発言を、メディアの前でもするのかと心底驚いた。

 ペナントレースが開幕して63試合を消化した今、西武はどん底に沈んでいる。交流戦では狡猾なセ・リーグ球団に黒星を重ね、現在7連敗中だ。

 内容的にも厳しい。チームスローガン「走魂」を掲げるなか、盗塁失敗で自らチャンスを潰すシーンが目につく。打線はチャンスをつくりながらも「あと1本」が出ず、12球団最少得点の貧打に喘いでいる。おまけに、送りバントもうまくいかない。

 スキャンダルで山川穂高が消え、3・4月の月間MVPを受賞した中村剛也が負傷離脱し、若手中心のチームはミスを連発している。

 弱い西武で象徴的だった試合が、5月27日のオリックス戦だ。0対2で迎えた8回裏、代走・若林楽人が一死1塁から盗塁を仕掛けてアウトになった一戦と言えば、ライオンズファンは苦い記憶を思い返すだろう。終盤に2点を追いかけるなかでの二盗失敗は、野球のセオリーでは「あり得ない」プレーとされる。

 確かに西武は「ぬるい」。平石HCの言うとおりだ。

 ストレートな物言いをする彼は、球界では「熱い男」として有名だ。高校時代は、伝説的な厳しさで知られるPL学園出身で主将を務めた。同志社大学、トヨタ自動車と名門を渡り歩き、2004年ドラフト7巡目で楽天に入団。7年間の現役生活ではレギュラーに定着できなかったものの、引退翌年の2012年から楽天初の生え抜き選手としてコーチに就任すると、あの星野仙一に一目置かれ、ヘッドコーチ、監督まで登り詰めた。現役時代に実績のない男が、指揮官になるのは球界の常識からすれば異例の“出世”である。

 楽天時代に酒席を時々共にしたという報道関係者からは、球団上層部から理不尽な要求をされるたび、ことごとく突き返していたとも聞いた。

 それほど熱い男にとって、今の西武はどう映っているのか。上記のオリックス戦後、ぶら下がり取材で直撃することにした。

今のライオンズも「ぬるい」ですか?

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