2023/06/11
広島中心部に現れる“サッカー専用”新スタジアム 構想20年、「常時満員」へ米国流から得たヒント
https://the-ans.jp/column/330147/
ヨーロッパでなくMLSのスタジアムを参考にした理由

 建設地が決まってから、信江は精力的に海外視察をこなすようになる。イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、そしてオランダ──。

「やっぱりヨーロッパっていうのは、サッカーの大きな源流であるのは間違いないです」と信江。しかし当人の中には、ただ欧州のスタジアムを模倣することへの違和感もあったという。

「というのも、私どものファーストプライオリティは『満員のスタジアムを作る』でした。ヨーロッパでのサッカーって、観るスポーツの王様であり、最もプライオリティが高い。そんなヨーロッパのやり方をそのまま取り入れて、広島のスタジアムが満員になるかといえば、それは違うんじゃないかと思ったんです」

 信江がもうひとつ気になっていたのが、プレミアリーグでもブンデスリーガでも、男性客が圧倒的に多く、逆に女性客や家族連れが少なかったことだ。そんな時に、ある記事が目にとまる。それはアメリカの国内リーグ、MLS(メジャーリーグサッカー)の平均入場者数が2万人を超えたというもの(ちなみにJ1の2万人超えが、初めて達成されたのは2019年である)。

「その報道を見て『え、どういうこと?』って思ったんです。というのも、アメリカには4大メジャースポーツがあって、サッカーは難しいという先入観があったからです。それで2019年の夏、MLSのスタジアムをあちこち視察しました。最も参考になったのが、ミネアポリスにあったアリアンツ・フィールド。ヨーロッパと違って、家族連れや女性客が多かったんですよ。しかも、座席で試合を観ていない人もけっこういたんですね(笑)。お客様がピッチを囲むように作られたコンコースの様々な場所で、試合を思い思いに楽しむ姿が印象的でした」