日本テニス協会(JTA)審判委員会の委員長を務める岡村徳之さん(61)に見解を聞いた。

◇審判団はルールにのっとって対応

加藤選手が失格となった問題ですが、結論から言えば、審判団はルールにのっとって正しく対応したということです。

4大大会において、その場で選手を失格にする場合、大まかには四つの規定があります。対戦相手、審判、ボールパーソン、観客に対して、次のような行為に及んだ場合です。

直接危害を加えた場合▽言葉による侮辱行為を行った場合▽ボールが当たったか当たらなかったかに関わらず、故意に危険なボールを打ち込んだ場合▽故意ではないが、打ち込んだボールが当たるなど危険な行為を行った場合―の四つです。

今回の加藤選手は故意ではなかったが、四つ目の「危険な行為」に当たると判断され、失格となりました。ルールの上では、故意か故意ではないかは判断のポイントではないのです。

主審が一度、警告と判断した後、対戦相手の抗議によって判断が覆り、失格になったことも論議を呼んでいます。これも審判目線で見れば、問題はないと言えます。主審はあくまでも技術的な部分での最高責任者であり、「警告か失格か」といったルールの取り扱いについては大会全体の責任を担うスーパーバイザーやレフェリーに判断を仰がなければならないのです。

今回も、コート上に呼ばれたスーパーバイザーやレフェリーが主審、選手、ボールガールから状況を確認した上で判断していました。そもそも、相手の選手にも抗議する権利はあるので、その行為自体は本来、責められるべきものではないはずです。

ただ、今回の事例はテニス界に一石を投じることになるはずです。4大大会をはじめ、テニス界ではビデオ判定の適用は(サーブやレシーブ、ラリーといった)インプレーのジャッジに限られています。今回の加藤選手の行為はプレー外で起きたことで、審判団が映像を見直すことはしませんでした。

サッカーや野球などメジャースポーツにおいて、映像で検証するのは今や当たり前の時代です。今後、失格などの重い判定を下す場合、しっかりと映像で検証した上で、選手やファンに明確に根拠を示せるようにルールを改正する必要があると思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d2b53198c6a30229a6632cda6decc4fcf9fab50f