日刊スポーツ2023年02月19日07時13分
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岸田文雄首相は、車いすテニスの第一人者で先月引退を発表した国枝慎吾さんに国民栄誉賞授与を検討している。

同賞を巡っては、時の政権の「人気取り」との評が常につきまとうが、過去の受賞例を見ると、内閣支持率の上昇にはつながっていない。

首相は今月3日、検討を指示した理由について「前人未到の活躍をし、スポーツ界に大きな業績を残した」と説明した。

現在、内閣府が有識者から意見聴取を行っており、政府関係者は、決定は早くても3月との見方を示す。日本人として初めて四大大会とパラリンピックを全て制覇した国枝さんの受賞が正式に決まれば、パラスポーツ選手としては初となる。

ただ、2000年以降の11の受賞例を振り返ると、賞を贈った後の支持率は下落するケースが目立つ。

森政権は同年10月、五輪女子マラソンで金メダルに輝いた高橋尚子選手に授与したが、時事通信の世論調査の支持率は前月比5.1ポイント減と発足以来最低の18.0%を記録。低支持率にあえいでいた森内閣に、中川秀直官房長官がスキャンダルで辞任したことが追い打ちをかけたのが実情だ。

低支持率に苦悩していたのは野田政権も同様。12年11月にレスリングの吉田沙保里選手に授与した後の支持率は約6ポイントマイナスの17.3%に下落した。野田佳彦首相は八方ふさがりの政権運営を打破しようと衆院解散に打って出たものの、翌月の衆院選で大敗し、下野した。

微増ながら表彰後に支持率が伸びたのは、レスリングの伊調馨選手に授与した16年の安倍政権で、1.6ポイント増の51.0%。2000年以降で上昇したのはわずか3回にとどまっている。

年内の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、岸田政権の支持率は低迷が続く。国枝さんへの授与検討は「首相の思い」(政府高官)とされるが、思惑通りとなるかは不透明だ。