デイリー新潮

失敗は成功のもと。失格になったのは残念だが、同じミスは繰り返さないはず。高梨沙羅(26)にそんな期待を抱いた人も多かったようだが、現実にはミスが繰り返される。彼女はなぜ経験に学ばないのか。

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 昨年2月の北京五輪では、混合団体でスーツの規定違反に問われ、まさかの失格になったスキージャンプの高梨。号泣する姿に涙を誘われたファンも多かったようだ。だが、そんな人も、失敗から学ぶことを期待したに違いない。

 ところが、昨年10月にはドイツのグランプリ・クリンゲンタール大会で、この1月15日にも、山形県の蔵王で行われたワールドカップで、立て続けにスーツの規定違反に問われ、失格になったのである。結果、1本目も2本目も95メートルを飛びながら、最下位に。

■日本人ならではの不利な面
 どうして、こういうことが起きるのか。スポーツライターの折山淑美さんは、三つの理由を挙げる。

「高梨選手はベストコンディションで競技に臨むため、その都度、微妙な体重コントロールをし、水を飲んで体重を200グラム増やす、なんてこともします。その上、海外遠征や連戦で疲労が蓄積し、痩せることも。体重や腰回りを、いつも一定に保つのが難しいのです」

 日本人ならではの不利な面もあって、

「欧州での試合が多く、欧州のチームは毎回、新調したスーツを試着して練習できます。反対に、日本チームは海外遠征中、新調したスーツを試着しつつ練習することが難しいのです」

 スーツが手作りであることも関係あるといい、

「スーツ作りの専門家がチームに同行し、各選手のサイズに合わせて手作業で作り上げるので、手間暇がかかる上、規則いっぱいいっぱいの線を狙って仕上げます。しかし、着ているうちに伸びたり変形したりするし、手縫いのため、縫い目にも微妙な誤差が生じます。その辺りが、抜き打ちチェックで違反とみなされるケースがあるのです」

 そして、こう加える。

「高梨選手にかぎらず、スキージャンプの選手はみな、スーツ作りの段階から、ギリギリのところで戦っていることを知ってほしい」

■国内開催の重圧から
 とはいえ、1月のW杯は会場が蔵王。むしろ日本人に有利だったはずだが、国際スキージャーナリストの岩瀬孝文氏は、

「高梨選手ならではの責任感と、国内開催のための重圧からくる迷いもあり、ギリギリを狙っていたのだと察します」

 と話す。実際、重圧がかかるのだろうが、ある元選手はこんな話を。

「ジャンプの選手は競技に際し、サイズが微妙に異なるスーツを4~5着用意するもので、1本飛ぶごとに別のスーツに着替えることもできます。今回、高梨選手は1本目のジャンプで着たスーツがセーフだったので、2本目で飛距離を伸ばすために、緩めでより浮力がつくスーツに着替え、違反になった。違反の可能性を認識しながら、絶対に勝たねば、というプレッシャーに屈したのです。違反を繰り返すのはコーチのせいではなく、彼女自身が判断した結果です」

 きわどいところで勝負しているのである。だったら、試合後に記者会見を拒まず、自らそう訴えたほうがよかったのではないか。あるスポーツ紙の記者は、

「最近の高梨選手は、報道関係者や競技関係者に対し、強弁したり違背したり高飛車な態度をとったりしがち。彼女への風当たりが強まっているのを感じます」

「週刊新潮」2023年2月2日号 掲載

新潮社
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02011056/
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