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 不動産以外の資産も「数千億円ある」(芸能事務所幹部)と言われている。財務面では超優良企業なのだ。ジュリー社長が芸能ビジネスへの関心を失わない限り、あるいは投資にでも失敗しなかったら、ジャニーズ帝国は崩壊するどころか、少なくとも10年先、20年先までは継続するに違いない。

 社会貢献度も芸能事務所の中では一番。ノブレス・オブリージュ(財産・権力・地位を持つ者は相応の社会的責任や義務を負う)は果たしている。阪神・淡路大震災(1995年)の被災地に8億円以上を寄附したのを始め、自然災害に襲われた被災者、コロナ禍の医療現場への支援を続けており、寄附総額は約27年間で100億円を軽く超えている。

 もっとも、副社長だった滝沢氏の退所はやっぱり痛い。暗い影をさしている。滝沢氏が担っていたジュニアの育成は井ノ原快彦(46)ジャニーズアイランド社長に引き継がれたものの、その手腕は未知数である。

 またジャニー氏は滝沢氏の「未来のスターを見抜く能力」も買い、自分の後継者に指名したが、これも井ノ原やほかの誰かが代役を果たせるかどうかは分からない。

「ジャニーさんは女子高生の目を持つ」

 ジャニー氏の眼力は凄まじかった。ファンならご存じの通り、滝沢氏や松本潤(39)らは10代前半のころは突出した存在には見えなかった。ところが、ジャニーさんはやがてスターになると確信していた。

 音楽業界などでは「ジャニーさんは女子高生の目を持つ」と言われた。確かに女子高生が「この子はカッコ良くなる」と評した少年は男前になることが珍しくない。ジャニー氏はセンス抜群だった。

 そのジャニー氏が他界し、滝沢氏も去った後、誰が将来のスターを見抜けるのか。事務所の大きな課題に違いない。

 滝沢氏はテレビ各局のトップを相手とする営業活動、タレントらの相談相手なども1人で務めていた。営業はほかの人間も代わりが務まるだろうが、タレントの相談相手はどうするのか。

 その存在が不在だと、「自分は冷遇されている」などと考えるタレントも出てくるだろう。また退所者が出る可能性がある。それでは会社は継続しようが、先細る。

 事務所自体は企業としてのアップデートが進んでいる。昨年6月にはNHKから大物理事(民間企業の元・役員)を顧問として招き、幹部にも大手広告代理店出身者がいる。コンプライアンスの強化や新事業の展開、必要に応じてのデジタル化などはスムーズに運ぶはず。

 むしろ心配されるのはジャニー氏、メリー氏が築き上げた古き良き事務所の伝統が守れるかどうか。メリー氏は自分に反旗を翻したタレントを除くと、かわいがり、守った。それが「うちの子たち」という独特の呼び方に表れた。ほかの事務所のように「うちのタレント」とは言わなかったのである。

 平野紫耀らの退所を止められなかったのはハッキリ言って痛い。勿体ない。事務所側は「うちの子」という感覚で接したのだろうか。