【ドーハ(カタール)3日=岡島智哉】カタールW杯は1次リーグの48試合が終了し、この日から決勝トーナメント1回戦がスタート。オランダ―米国、アルゼンチン―豪州の2カードが行われ、合計50試合を消化した。残るは3位決定戦を合わせて14試合となった。

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 ここまでの50試合を総括すると、戦術面で「ハードワーク至上主義」の傾向が強くなってきたように感じられる。

 クロアチアが決勝に進んだ18年のロシア大会、デンマークが4強入りした21年欧州選手権などからその“予兆”はあった。

 サウジアラビアやイランが最後の1秒まで走りきって強豪から勝ち点3を奪ったり、あるいはアルゼンチンの9番を背負う選手が相手GKに猛プレッシャーをかけ続けたりする姿を見ると、時代の流れを感じる。

 背景として、「交代5人制」が導入された影響は大きい。

 クラブチームでは、「強豪クラブ(または金満クラブ)とそうでないクラブの力量差が開いてしまう」と言われているこの制度。選手層の違いが結果に反映されやすいという理論に基づくものだが、代表戦に限れば、不思議と実力を拮抗させる一助となっている。

 どうしても守備に回る時間帯が多くなるチームが、ハードワーク自慢の選手を先発に並べ、目一杯走らせる。体力の落ちてきたタイミングで、イキのいい、より攻撃的な(展開によっては守備的な)選手を投入する。交代5人制により、ハードワークを持続させやすい環境が整った。これが強豪国を苦しめている。

 アジア勢の躍進(過去最多の1次リーグ7勝)、現行方式となった98年フランス大会以降初めて1次リーグ全勝が1チームもなかったことにも関連しているだろう。

 各ポジションに実力者がそろう強豪国は、ハードワークを基本としながらも、ここまで前面に押し出す戦術を採用する必要がない。異例の11月開催による各国の戦術の準備不足も相まって、「世界の差は縮まっている」と感じさせる1つの要因と言える。

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 とはいえ。結局、強い国は強い、となりそうな気配もある。この日のオランダやアルゼンチンの勝ち方を見ると、練習不足が懸念されていた強豪国も、試合を重ねる中で徐々に連携を深めてきた感がある。

 強度という概念が広がったことで、レジスタと呼ばれるような10番の居場所がなくなった。それならばと足元のうまいDFやGKが重宝される時代が来たかと思えば、それに対抗すべく猛プレスが可能なFWが求められるようになった。そうやって、時代は、サッカーは変化していく。「交代5人制」の導入で変化が加速する中、次はどうなるか。残り14試合、新興国の躍進にも、強豪国の意地にも期待だ。

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