先週末の動員ランキングは、『ONE PIECE FILM RED』が土日2日間で動員9万人、興収1億2300万円をあげて13週目の1位となった。11月6日までに累計動員は1301万人、累計興収180億円を突破しているが、ギョッとするのは週末の数字だ。興収1億2300万円で1位。これは、首位の週末興収としてはコロナ禍前までの水準だと年間でも最低レベルの数字である。

 そのことを踏まえずに、今週末の日本全国のシネコンのスクリーンが新海誠監督の新作『すずめの戸締まり』にほぼ占拠されることを批判しても仕方がない。8月以降、新作では最終興収30億円の大台にギリギリ届きそうな『沈黙のパレード』をほとんど唯一の例外として、『ONE PIECE FILM RED』におんぶに抱っこ状態だった国内の映画興行。『すずめの戸締まり』は待ちに待った「大ヒットが約束された作品」なのだ。そこでもし観客を取りこぼすようなことがあっては、経営が傾いてしまうシネコン運営会社だって少なくないはずだ。

 同じような公開週におけるシネコンのスクリーンの異常な独占状態は、一昨年10月公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、昨年12月公開の『劇場版 呪術廻戦 0』以来のこと。当時も一部で問題視する声はあったものの、長びくコロナ禍によって興行全体が低空飛行を続けていて、公開延期される新作も相次ぐ中、「異例の出来事」として受け止められていた。しかし、ここまでの2022年を通しての興行の状況や新作公開本数(特にハリウッド映画)を追っていれば、もはやこれが今後は「平時の出来事」となるのは避けられないことがわかる。ちなみに、このようなスクリーンの独占状況は過去に韓国の興行界などでも独占禁止法に触れるのではないかと取り沙汰されてきたが、1日に1回だけ上映した別の作品をその作品の公開スクリーン数としてカウントするなど、いくらでも抜け道があるのが現状だ。

 今回の件がソーシャルメディアなどで話題になっている理由の一つとしては、同日にマーベル・シネマティック・ユニバースの新作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の公開が重なったこともある。確かに、7月に公開された『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』を最後に、ハリウッド映画では一定のヒット作の基準となる興収20億円どころか、興収15億円を超える作品さえ1作品もない。マーベル映画のファンだけでなく、外国映画のファンの中にとって、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は久々の期待作ではあるだろう。

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