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Photo: Raymond Hall/GC Images

イーロン・マスクはいかにして新たなセレブリティ像を作り上げたのか?
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昨今、ツイッター買収に関する一連の騒動をはじめ、イーロン・マスクの言動が報じられない日がないほどだ。驚くべきは、度重なる炎上やメディアからの執拗な攻撃にも潰されることなく、ますますフォロワー数を増している点である。イーロン・マスクという新種のセレブリティを、米紙「ワシントン・ポスト」が分析している。

■「ビジネス界のドレイク」

ジェイ・ポラード=ワトキンスがイーロン・マスクのファンになったのは、2014年、10歳の育ち盛りのときだった。

アトランタ育ちの彼は、ビデオゲーム「EpicDuel」をプレイ中、イーロン・マスクという名の悪役キャラクターに出くわした。「未来的な、アーマースーツみたいな服を着ていました」とポラード=ワトキンスは振り返る。まるで「アイアンマンのパワーアップ版みたいな」キャラクターだったという。

その「イーロン・マスク」が、当時ニッチなIT業界のヒーローで実在の人物、イーロン・マスクに対するゲームデザイナーのオマージュであることを知るまでに、長くはかからなかった。

その後まもなく、ポラード=ワトキンスは課外活動で天文学に興味を持ち、マスクの民間宇宙開発会社「スペースX」のニュースを貪り読むようになった。それは孤独な趣味だった。

「誰も天文学など興味がありませんでした」と彼は笑って話す。しかし、2010年代後半に、驚くべきことが起きた。ラッパーたちが歌詞の中でいかにも親しげにマスクの名を呼び始め、たちまちポラード=ワトキンスの友人もマスクを話題に出すようになったのだ。

「今じゃ、イーロン・マスクといえば知らない人がいませんよね」とポラード=ワトキンスは堰を切ったように話し出した。

「あらゆる場所でイーロン・マスクの話題を耳にします。誰もがその名を知っています。言ってみれば、ビジネス界のドレイク(カナダ出身の人気アーティスト)みたいな存在なんです」

イーロン・マスクは常に他のITオタクとは一線を画す存在で、その関心はハードウェアや実務的な問題を超えたところに向けられてきた。奇抜な発明家としての彼のイメージは、アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.にインスピレーションを与え、2010年には『アイアンマン2』にカメオ出演を果たしている。

さらに、女優のアンバー・ハードやタルーラ・ライリー、ミュージシャンのグライムスとの交際がマスコミで大々的に報道され、もちろん、世界一の富豪に上り詰めたことでも脚光を浴びた。

マスクはメットガラに出席したこともあれば、バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を務めたこともある。オレンジをモチーフにした服装で、大物ラッパーのカニエ・ウェストとツーショットを撮ったこともある。

■右翼思想への転向

だが、この5年間で、マスクは「IT業界の有名人」から「単なる有名人」へ、そして「赤い薬(red pill)の有名人」とも呼べる存在へと変貌を遂げた。マスクは2020年に、映画『マトリックス』に登場する「赤い薬を飲め(Take the red pill)」というセリフをツイートしたことで、右翼思想への転向疑惑が持たれることになった。

この1年でフォロワーが約2倍の1億人強となったツイッター上で、マスクは進歩派の人々を愚弄し、「言論の自由」を愛するお仲間たちを煽り立てるといった振る舞いに出ているが、その真意は推測の域を出ない。

果たして、この世界一の大富豪は実際のところ右翼なのか、それともふざけただけなのか? 本当に440億ドル(約6.5兆円)払ってツイッターを買収するつもりだったのか、それとも最初から冗談のつもりだったのか? 

マスクは買収撤回を表明し、ツイッターの取締役会は義務の履行を求めて提訴しているが、この騒動のおかげで、マスクはポップカルチャー界の大物としての勢力を拡大した。マスクの名声は3つの段階を経て拡大してきたが、影響力のある経営者、変わり者のセレブ、そして世論を二分させるネット上の撹乱家という、他に類を見ない組み合わせである。

IT業界の億万長者の大半は、自社のビジネスに支障をきたす恐れがあるため、ネット上の挑発行為には手を出せない。マスクのネット上の悪ふざけも、高くついている。スペースXの従業員の中には、マスクの公の場における行動は煩わしく恥ずかしいものだと非難する書簡に署名した者までいる。

しかし、マスクはすでに自分の会社を通じてカルト的な人気を確立していた。…
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