2021年3月に人気ロックバンド[Alexandros]を局所性ジストニアのために“勇退”(脱退)した庄村聡泰。現在はスタイリスト、音楽プロデューサー、ライターとして幅広く活動している庄村に、ドラマーとしての人生を絶たれたときの心境、そして、“ドラムを叩けない自分”を受け入れ、新たなキャリアに踏み出すに至ったプロセスを語ってもらった。

 局所性ジストニアとは、手や足などの筋肉がこわばって動かない、もしくは、意図せず動いてしまって制御できなくなり、それまで当たり前のようにできていた動作ができなくなる病気。熟練したスポーツ選手やミュージシャンなどに現れることが多く、これまでにもドラマーの白鳥雪之丞(氣志團)、山口智史(RADWIMPS)、ギタリストの田中義人、歌手の伍代夏子、黒木渚などがジストニアの発症を公表している。ロックバンド[Alexandros]のドラマーとして活躍していた庄村聡泰も、“ミュージシャンの職業病”と呼ぶべきこの病気に見舞われた一人だ。

■ドラムの前に座ると足が思うように動かない

 庄村がジストニアのために活動休止を発表したのは、2019年6月。その数カ月前から思うように右足が動かせなくなったそうだが、当初はメンバーにも言えなかったという。

「日常生活は問題ないのですが、ドラムを叩くと右足が思うように動かせないんですよ。リハ―サルでは大丈夫でも本番でいきなり動かなくなることもあり、ステージに立つのが恐怖でしかなくて。ただ、しばらくはメンバーにも言えなかったですね。(症状が出ていることを)自覚したくなったし、人に知らせることで、それが現実になってしまう感覚があったので」

 足をかばいながらドラムを叩き続けたことで、腰を痛めてしまう事態になり「じつは腰ではなくて、足なんだよね」とメンバーに告白するも「俺の体のことを第一に考えてくれていた」という。しかし症状は改善されず、2020年1月にバンドからの“勇退”を発表した。

「リハビリしてバンドに戻ることを目指すか、ミュージシャンを辞めるか。選択肢は二つしかなかったですね。そもそも[Alexandros]に加入したときから『これが最後のバンド』と決めていたんです。実際、10代の頃に思い描いていた夢はすべて[Alexandros]で叶えたし、この先、あの人たち以外とバンドをやることはまったく考えられなかったので。それくらい素敵なボーイズたちなんですよ(笑)」

 さらに庄村は、「これは自分の矜持というか、意固地な考え方でもあるんですが、自分の場合はドラムにこだわることで、音楽を続けることが苦痛になり、音楽自体を嫌いになってしまいそうだったことが一番怖かったんです。“ドラムを叩ける自分”よりも“音楽を好きな自分”のほうを優先させて頂きたかったんです」と言葉を重ねる。

■病を“変化”として受け入れる

 バンドを“勇退”する際に発表された公式コメントのなかで庄村は、「この症状も自分の一部として受け入れた上で生きていきたいと思う様になりました」と記している。人生をかけて取り組んできたドラマーとしてのキャリアを絶たれた後、“ドラムを叩けない自分”を受け入れる。言うまでもなく簡単なことではなかったはずだが、庄村は明るい表情で、「そうする以外、方法がなかったんですよ」と語る。

「もちろん治療やリハビリもやったんですけど、超単純なフレーズを1分続けることもできなくなって『これはどう考えても無理でしょ』って笑うしかなくて。いろいろと時間をかけて考えましたけど、ドラムを叩けない、不完全な自分を受け入れるしかないと思ったんですよね。『背負って生きていく』とか『病気と向き合う』という言葉も違和感があって。そんなドラマティックな話ではなく、(加齢に伴う)経年変化みたいなものとして捉えるというか。ドラム、音楽を諦めるためには、そこまで自分を持っていく必要があったんだと思います」

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