吉本ばななさんが、子どもに読ませたい!「幼少期に影響を受けた本」3選
9/17(土) 19:10 婦人画報
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cFUMIYA SAWA
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あの本との出合いが“いま”を作っている──。各界で活躍する皆さんに、忘れ難い本とその思い出を聞きました。色褪せることのない名作の数々は、子どもにも大人にも興味深いラインアップ。今回は、小説家・吉本ばななさんに忘れられない本について伺います。

よしもとばなな●吉本隆明を父にもち、小説『キッチン』でデビュー。近著に『私と街たち(ほぼ自伝)』がある。noteでメールマガジン「どくだみちゃんとふしばな」が好評配信中。

撮影=桂太[フレイム] 『婦人画報』2022年10月号より

◆ミステリーに夢中だった。あのころ大好きだった物語はいま読んでも新鮮でおもしろい!

父の仕事のおかげもあって、幼いころから本に溢れた環境で育ちました。家にあるさまざまな本を手に取って片っ端から読む。そして好きだと思う作家の本に巡り合ったら、図書館でその人の本を探してまた読む。子どものときに蓄積された読書が、いまの自分に影響を与えているのはたしかで、子どものころに胸躍った作品は、時を経て読み返しても変わらずおもしろいものです。

コナン・ドイルが書く文章がとても好きで、私自身小説家として、強く影響を受けています。なかでもシャーロック=ホームズは当時のロンドンの風俗と、幻想的な部分というのがいい塩梅で混ざり合っているところが好きです。今回あげた偕成社の『シャーロック=ホームズ全集』は、原文に忠実であることと、子どもにもわかりやすい平易な言葉で書かれていること、そのふたつの均衡がうまく保たれているという点において、素晴らしい。子ども向けだけど、子どもをバカにしていない。そんな訳だからこそ、大人になったいまも変わらずおもしろく感じるのでしょう。

『ちいさいおうち』は言わずと知れた名作ですが、子ども心に非常に感銘を受けた作品です。子どもはいつも“いま”しか見えてないもの。でもこの物語に触れることで、普遍だと思っていたことも未来には大きく変化するのかもしれない、そういうことが起こり得るのだと気づいた感覚がありました。

『ガブリエリザちゃん』は、なんでも食べてしまう食虫植物が主人公という設定ですが、その悪気のなさがおもしろくて。何かを狙いにいくような意図があるわけでもなく、とてもピュア。ガブリエリザちゃんのデザインも非常に秀逸で、忘れ難いものがあります。

子どもが本を読むのに重要なのは、気づけばそばにあるということだと思っています。そして、大人が読んでほしい本よりも、大人が読んでもおもしろいと思える本であることが大切。それに反発して、自分で読みたい本を探してくるようになったら、それはそれでいいことです。“読むべき”もので勝手に方向性をつけてしまうのはよくない。大人世代がいつまでも好きな本や、昔好きだった本は、いまの子どももきっと楽しめるはずです。



●『ちいさいおうち』 バージニア・リー・バートン/著 石井桃子/訳 岩波書店 1,870円

●『ガブリエリザちゃん』 H・A・レイ/著 今江祥智/訳 文化出版局 1,320円

●『シャーロック=ホームズ全集(全14巻)』 コナン・ドイル/作 各務三郎/訳 偕成社 18,480円

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