2022.09.17

週刊現代講談社

「撮影で苦労した思い出はありますか?」「それはもう、山崎努さん演じる要蔵に寝室で乱暴される場面ですよ」……。前編記事『次々と殺人事件が発生…「祟りじゃあ~」横溝映画の最高傑作『八つ墓村』はこうして生まれた! 』に引き続き、本稿では『八つ墓村』の壮絶な舞台裏に迫る。

https://gendai.media/articles/-/99688

樋口尚文/'62年、佐賀県生まれ。映画評論家、映画監督。著書に『大島渚全映画秘蔵資料集成』『秋吉久美子 調書』など、監督作に『葬式の名人』などがある

中野良子/'50年、愛知県生まれ。'71年に女優デビューし『君よ憤怒の河を渉れ』('76年)などに出演。'86年より「平和文化」についての講演を続ける

野村芳樹/'48年、東京都生まれ。大学卒業後、父・野村芳太郎と同じ松竹に入社してプロデューサーを務めた後、独立。現在は株式会社クラップボード代表






蹴飛ばされて転げ回った

樋口 撮影で苦労した思い出はありますか?

中野 それはもう、山崎努さん演じる要蔵に寝室で乱暴される場面ですよ。

山崎さんは普段、寡黙で温厚な方なのですが、撮影が始まると完全に要蔵になりきっていました。芝居だから本気で暴力を振るうことはないと思っていたのは大間違いで、スタートの声がかかると、まったく手加減がない。蹴飛ばされて布団の上で転げ回ることに。これは大変だ、と慌てました。

体中あざだらけになると困るな、と思ったのですが、後で確認するとなにも残っていない。派手に見えてもダメージがないギリギリの力加減で演じられていたのですね。あの迫力は、高倉健さんにも匹敵するのではないでしょうか。

樋口 そのほかにも豪華な出演者が顔を揃えていますね。金田一耕助役の渥美清さん、そして主役の辰弥はショーケンこと萩原健一さん。

野村 ショーケンが演じる主人公の辰弥は空港の誘導員という設定で、物語は羽田空港のシーンから始まります。

→夏八木勲が演じた落ち武者
→主人公を演じたショーケンこと萩原健一


中野 自分の出自を知り、八つ墓村に呼び戻されて、事件に巻き込まれる。こうした受け身の演技はそれまでの彼の出演作にはなかったと思いますが、萩原さんはもともと感性がピンピンと飛び跳ねるような鋭い方ですから、見事に演じ切っていましたね。

野村 横溝正史のファンは男性が中心で、『犬神家』に熱狂したのも男性が多い。ショーケンを起用して女性層を獲得することで、角川映画と差別化を図ったのかもしれません。
を図ったのかもしれません。






やはり凄絶なのは…
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