文春オンライン7/29
https://bunshun.jp/articles/-/56171

■ライブ中の盛り上がりに紛れて痴漢
「基本的に自分勝手な人は迷惑ですよね。大声を出して歌ったり、まわりにぶつかるほど踊り狂ってたり……。酒に酔って、ナンパしてくる男性グループも対処がめんどくさいのでイヤですね。

あと、痴漢もけっこういます。ライブ中は盛り上がっているので、一瞬わからないんですけど、明らかに狙って触ってきてるんですよ。でも、犯人の手を掴んで捕まえることまではしたことないですね。せっかくの雰囲気に水を差しちゃうかな、と思ってしまって」

フェスの伝統として、参加者の自治性に任せるという不文律があるようで、軽めの犯罪やトラブルは表面化することは少ないようだ。

「はじめてみんなでフェスに行ったとき、各ステージから同じくらいの距離の場所にレジャーシートを敷いて簡易的な拠点を作ってたんですよ。各自が好きなアーティストのライブに行ったり、グッズを買ったらそこに戻ってくる、みたいな。

基本的には誰かが留守番してたんですけど、全員が観たいステージがあって、荷物を置きっぱなしにしてみんなでそこを離れちゃったんです。帰ってきたらレジャーシートがなくなって、リュックだけが置かれてました。

『レジャーシートを盗む人なんているんだね』とか話しながらリュックの中を見たら、さっき買ったばかりのTシャツやタオルも盗まれていました。自分たちが悪かったな、と思って特に届け出もしなかったです。ただ、これ以降は買ったTシャツはその場で着ることにしています」

■初期から参加してる勢によるマウンティングも
会場内にサイトがあり、テントを張って過ごすことができる「キャンプフェス」は、また雰囲気が異なるという。5年前にはじめてフェスに参加したという高杉裕太さん(仮名・29歳)は語る。

「老舗のキャンプフェスに道具を揃えてはじめて行ったんですよ。フェスはもちろん、キャンプも初心者だったので四苦八苦しながらテントを建ててたら、通りがかったオジサンに『それじゃダメだよ』って声をかけられたんです。

てっきり、そのオジサンがいろいろ教えてくれるのかと思ったら、自分の道具を持ってきて『こういう道具を使わなきゃ』と見せびらかし始めて、それからこっちの服装から靴までダメ出しされて『俺は伝説の1回目から来てるから』と、ひたすら説教と自慢だけして帰っていきました」

キャンプフェスには初期から参加してる仙人のような一派がいて、他の参加者とは、一切触れ合うことなく、ひっそりと楽しんでいるのだ。

「森の奥の方に常連同士でテントを建てて、近寄りがたい雰囲気を醸し出してますね。たまにそっちの方角からよくわからない音楽や謎の煙が風に乗って漂ってくることがありますが、あまり深入りしないようにしてます」

「いまやどのフェスも落ち着いてますよ。その理由はなんといってもフェス参加者たちが高齢化したことですね。わりとメジャーなフェスでも参加者は30代以上がメインなので、酔って暴れたりする人は少なくなりました」

若者たちが元気いっぱいに音楽を楽しむ、という従来のイメージとは変わってきているというのだ。

「ざっくり分けると、音楽系メディアが主催しているようなメジャーなフェスは先程言ったような30~40代がメインの客層。夫婦やカップル参加が多いので、落ち着いてます。男女のグループで来てる人もいますけど、サークルっぽい雰囲気なので、ナンパもトラブルも少ないですね。

老舗のキャンプフェスや外タレ系のフェスは平均年齡がもっと上で、40~60代くらいじゃないでしょうか。もっとナチュラル系のキャンプフェスになると、小さな子どもを連れた家族連れがメインだったりするので、無茶する人はいません」

■「お金と時間に余裕がないと行けない」
「フェスの高齢化現象」を言い換えると、新たな世代の若者たちが入ってきていない、ということになる。

「最近の若い世代は、音楽はもっぱらネットやスマホで聴くものになっていて、フェスどころかライブに興味がない。コロナ禍を経てますますライブ離れが起こっていて、復活したところで行こうと意気込む若者は少ないんじゃないでしょうか。屋内の都市型フェスはまだ若い世代も見かけますけど……。

フェスってそこそこお金と時間に余裕がないと行けないじゃないですか。それも今の若者にはハードルが高いんじゃないでしょうか」

若者たちはお金がないので、わざわざ外で「ロックなんて聴かない」のだ。それに伴い、フェスでのトラブルも活気も右肩下がり気味、ということらしい。

※一部略