文春野球コラム ペナントレース2022

後上 翔太(純烈) 2022/07/03

「無事是名馬(ぶじこれめいば)」という言葉があります。

 エンターテインメントの世界に身を置く者として、この言葉の重みを感じずにはいられません。ファンが「見たい時に見られる」という存在こそ、もっと評価されるべきだと感じるのです。

 歌謡・演歌界の大先輩である北島三郎さんや五木ひろしさんなどは、大きな劇場で1日2部制の座長公演をこなしておられます。年間通して続けていれば、体調がベストな日ばかりではないはずです。声が出にくい日や体が重いと感じる日もあるでしょう。

 それでも、幕は待ってくれません。ステージに立った以上は、最高のパフォーマンスを見せる。それが真のプロであり、スターなのだと学ばせてもらっています。





骨折しても休まない男・丸佳浩

 プロ野球の世界も同じではないでしょうか。スタジアムにいる観客は毎日来られるファンばかりではありません。

 2カ月前からチケットを取り、楽しみにしていた試合直前。お目当ての選手がケガで登録抹消になってしまったとしたら……。仕方ないと割り切りつつも、落胆は大きいはずです。

 日々、当たり前のように試合が繰り返されるなかで見落とされがちですが、試合に出続けるということは160キロのボールを投げることと同じくらい価値があると思うのです。

 今季の巨人で開幕からフル出場を続けているのは、丸佳浩選手だけです。チームとしては首位・ヤクルトに大きく引き離されて苦しいシーズンが続いていますが、それでも2位に踏みとどまっていられるのも丸選手のような大黒柱が休みなく働き続けていてくれるからです。

https://bunshun.jp/articles/-/55401