6/7(火) 5:00配信 読売新聞オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/a986144347f772e2bf94ebe7fc88109109488600

 経済産業省がスポーツベッティング(賭け)の解禁に向けて取りまとめた素案について、スポーツ界はじめ各界から疑問の声が上がっている。スポーツ賭博の収益を「地域移行」を目指す部活動改革の財源に回すという構想もあり、批判の声も。スポーツ賭博が盛んな欧米では、不正の温床となっている現状もある。(運動部取材班)

■「水面下」批判

 スポーツ庁の要請で公立中学校の部活動改革を話し合った有識者会議の友添秀則座長(日本学校体育研究連合会会長)は6日、同庁の室伏広治長官に提言を手渡した。その後、「部活動は地域に移行しても、極めて重要な教育の領域だ。ベッティングとはまったく一線を画して議論したつもりだ」と、経産省にスポーツ賭博の収益を充てる構想があることを強くけん制した。

 経産省の構想には、スポーツ関係者も戸惑いを隠せない。「国は今回の仕組みについて、国民に信を問うべきだ。部活動の地域移行については公にしているのに、スポーツ賭博について表沙汰にせずに水面下で進めるのは、やり方としてよくない」。日本高校野球連盟の幹部はそう指摘する。
■球界

 他のスポーツ団体に先駆け、暴力団排除運動を推し進めるなど、不正な行為に厳しく対処し、国民的スポーツに発展してきたプロ野球からも異論が出ている。

 球界は、基本ルールとなる「野球協約」で八百長や野球賭博を禁じているのはもちろん、日本スポーツ振興センター(JSC)が運営するスポーツ振興くじ(toto)からも距離を置いてきた。2015年に超党派のスポーツ議員連盟がtotoの対象競技を拡大し、プロ野球も加える方向で検討したが、球界は賛同しなかった。同年7月に開かれたオーナー会議では、八百長行為などをしたとして複数の選手が永久失格処分を受けた過去の「黒い霧事件」などを踏まえ、導入にはファンの抵抗感が強いことを懸念する意見が出された。

 スポーツ議連はその後、プロ野球側に再びtotoへの参加を要請。12球団は検討を重ねたものの、見送りが18年のオーナー会議で報告された。

 元読売巨人軍監督で、参院議員も務めた堀内恒夫さんは、スポーツ賭博に関して「野球界は時期尚早」と反対する。議員時代から反対意見を主張してきたといい、「黒い霧事件」を踏まえ、「永久追放などの処分を受けて復権した人もいれば、処分を受けたまま亡くなった人もおり、完全に清算できたとは言えないと思う。それができないうちは、導入の話をすべきではない」と話した。

■社会的理解

 totoが定着しているサッカー・Jリーグでは、過去に成長戦略の一つとしてスポーツ賭博の可否が議論されたことがあったという。リーグ関係者は「法的な問題やギャンブル性が高い点が社会的理解を得られないということで導入は困難という結論が出た」と振り返る。

 日本相撲協会で危機管理委員長を務める高野利雄外部理事(元名古屋高検検事長)は「(学校の)先生たちの時間外の負担が大きい問題を解決するために地域で応援していくという話ならば、スポーツ賭博を財源にしなくとも他の方法は色々あるのでは」と話している。

■「合法」欧米 八百長疑い後絶たず…昨年、10競技903試合 調査開始以来最多

 スポーツ賭博が合法化され、国民の間で盛んな欧米では、賭けの対象として人気が高いサッカーやテニスなどで八百長が疑われる試合が後を絶たない。

 欧州のメディアによると、サッカーの欧州最高峰の大会、チャンピオンズリーグでは2018年、パリ・サンジェルマン(仏)に1―6で敗れたレッドスター(セルビア)のクラブ幹部らが5点差以上の負けに500万ユーロ(当時約6億5000万円)を賭けていた疑いで、仏当局が捜査に乗り出した。

 テニスでも19年、男子ツアー下部大会で八百長に関わったとして、スペインの捜査当局がプロ選手を含む83人を拘束したと欧州警察機構が発表した。アルメニアの犯罪組織が主導し、AP通信によると、少なくとも97試合で八百長や賭博行為が行われていたという。

 オッズの変動を監視し、不正が疑われる試合を警告している会社「スポーツレーダー」(スイス)は3月、昨年に世界76か国の10競技で不正が疑われたのは、同社の調査開始以来最多の903試合に上ったと発表した。AFP通信によると、スポーツレーダーは新型コロナウイルス感染拡大による大会中止などで資金難に陥ったチーム、選手らが八百長を持ちかけられる標的になりやすいと分析しているという。

(以下略、続きはソースでご確認下さい)