柳田理科雄空想科学研究所主任研究員

5/2(月) 9:01

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
『ドラゴンボール』の終盤に暴れまわった魔人ブウを覚えていますか。
数百万年前に魔導師ビビディが生み出したともいわれる怪物。長く封印されていたが、ビビディの息子・バビディの手でよみがえった。
まことに恐ろしいヤツで、人間をお菓子に変えて食べてしまい、口から吐く光で、見渡す限りを焼け野原にする。
しまいには、あろうことか地球人を全滅させ、地球を消滅させてしまった……!
こういう事態に立ち至ったのは、ブウが常識では考えられない再生能力を持っていたからだ。
槍で刺されても、バズーカで撃たれても、たちまち傷が修復する。体がバラバラになっても、その破片の1つ1つを焼かれても、平然と復活。猛毒を盛られてもケロリとしていた。
悟空たちは、地球消滅の寸前に界王神界へ退避し、ドラゴンボールで地球と地球人をよみがえらせ、みんなから分けてもらった元気で、特大の「元気玉」を作って、ようやくブウを倒した。
戦いは、このナレーションで幕を閉じた。
「ついに魔人ブウは消え去った……それは文字通り細胞ひとつ残さず完全に消え去ったのである……」。
なんとか倒せてよかったが、細胞ひとつ残さず完全に消え去った!? それはいったい、どんな倒し方なのか!?





◆なぜブウは不死身なのか?

『ドラゴンボール』の世界では、生死の垣根がまことに低い。
悟空もベジータも一度は死んでいて、時間限定でこの世に戻って戦った。ナメック星人のデンデは、死んだ人に手を触れるだけで生き返らせる。また前述のように、ドラゴンボールの力で、全滅した地球人が全員復活するという大量生き返りも発生した。
そうした世界観を思えば、魔人ブウは立派である。
何をされても死なない。つまり、生死の境を決して越えず、ただ一人、おのれの「生」を守り抜いているのだ。
この人だけ、なぜそんなことが可能なのか?
多細胞生物の場合、同じ種類の細胞が集まって組織を作り、組織が組み合わさって、消化器や循環器などの器官を作る。
器官は高度に専門化されているため、脳や心臓といった重要な臓器を破壊されると、個体は死んでしまう。
だが、魔人ブウにこうした常識は通用しないようだ。
胸に大きな穴をあけられても、すぐに元どおりになる。これはもう、体が器官に分かれていないか、分かれていても猛スピードで細胞⇒組織⇒器官という再生を果たすのだと思われる。
そういう生物は、細胞が1個でも生きていれば、何事もなかったように復活するに違いない。まことに厄介な敵であり、作中のナレーションが言うように、魔人ブウを倒す方法は「細胞ひとつ残らず消し去る」しかないのだろう。
細胞を消し去る方法は、通常の生物なら簡単だ。
炎や熱線を浴びせれば、70度でタンパク質が変性して元に戻らなくなり、90度でDNAの二重螺旋がバラバラにほどける。
数百度にも加熱すれば、周囲の酸素と反応して燃え上がり、細胞など跡形もなくなってしまう。
しかし、それも魔人ブウには通用しない。
ベジータが命と引き換えに起こした爆発では、直径数はあろうかという光球が発生した。この規模になると、温度は数百万度に達したはずで、さすがのブウも、いったんはバラバラになった。
が、破片がそれぞれ小さなブウとなり、合体して元の姿に戻ったのである。ブウの細胞は、高温にさらされても、変性も、分解も、燃焼もしないようだ。
――こうなるともう、細胞のもう一つ下の段階、すなわち「原子レベル」で破壊するしかないだろう。




◆石油25万tのェネルギー
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitarikao/20220502-00294105