「怖かった。断り切れなかった」

 一方的に授業を押し付けられた後輩の体育教師たちは、「柔道6段」のベテラン指導者に逆らうことができず、言うことを聞くしかなかったという。

 勤務時間中に職場を抜け出し、繰り返し京都や大阪に遊びに行っていたとして、大阪府立島本高校(三島郡島本町)の体育担当の石井義彦教諭(63)が29日、府教育庁から懲戒免職処分を受けた。

■1人でテーマパークや買い物に銭湯

 石井教諭は2020年4月から21年12月にかけ、199回、計695時間にわたり、同僚に「家の都合で出る」と言い残して職場を抜け出していた。教諭はその足で京都の河原町や大阪の天神橋筋商店街に立ち寄り、買い物をしたり、銭湯に行ったり、東映太秦映画村(京都市)で遊んでいた。

 昨年末、石井教諭が校内の会議に欠席していたことから、校長が「どこに行ったんや? もう帰ったんか?」と不審に思い、本人に問いただしたところ、「ズル早退」がバレた。教諭は教育庁の聞き取り調査に対し、「母親の介護などがあり、現実逃避したかった。認識が甘かった」と言い訳しているという。

 教育庁教職員室教職員人事課の担当者がこう言う。

「通勤用のICカードの乗車履歴から、行き先を特定しました。20年4月以降しか履歴を確認できなかったため、本人は否定していますが、それ以前はどうだったのかは分かりません。教員はパソコンにそれぞれIDとパスワードを入力して出退勤を記録しますが、石井教諭は複数の同僚教諭に自分のIDとパスワードを教え、代わりに勤務時間終了後の退勤を打刻させていた。上下関係が厳しく、同僚たちは従うしかなかったようです。無断外出した199回のうち、およそ3割が東映映画村で、1人で訪れていたそうです。本当に母親の介護だったか確認していませんが、どちらにしても処分の対象であることに違いはありません」

 石井教諭は日体大柔道部出身で、08年4月に島本高に着任。定年後、同校に再任用された。15年には息子で北京五輪柔道100キロ超級金メダリストの総合格闘家、石井慧の試合でセコンドを務めたこともある。

 石井教諭が丸投げした85回分の授業については複数の教諭が手分けして担当したという。教育庁は石井教諭が職場を離れていた時間分の給与、約150万円全額を本人に返還させる方針だ。

日刊ゲンダイ2022/04/01 06:00
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