新井貴浩さん

三年になるとキャプテンに指名されたので、毎日のように殴られていた。
とにかく、何かあると「キャプテンが悪い」ということになるのだ。

たとえば、実践形式のノックでサードがエラーしたとする。
すると、どういうわけかレフトを守っている僕が呼ばれて、自分がエラーした
わけでもないのに、「キャプテンだから」という理由でボコボコにされるのだ。
これほど理不尽なことはなかった。

僕の前のキャプテンもそのまた前のキャプテンも、同じように殴られていたから
「キャプテンとはそういうものなんだ」と納得させて耐えていた。

精神的には我慢する力、忍耐力が身についた。

やっぱり人間、ある時期には理不尽な経験をすることは大事だし、必要だと思う。
理不尽な経験をしたことがなく、そういうことに対して免疫ができてないと、
くじけたり、投げ出したりしやすいのではないか。

出典 新井貴浩 「阪神の四番 七転八起」