沙也加「怒鳴らないで」
前山「死ねよ、もう。めんどくせぇな」
沙也加「『死ね』って言わないで」
前山「死ねよ」
沙也加「『死ね』って言わないで」
前山「(遮るように)死ねよ」
沙也加「(やや涙声で)何で言うの?」
前山「死ねよ、マジで」

「死ね」という言葉を4回繰り返す前山。沙也加はハッキリと涙声になって、こう問いかけた。

沙也加「死んだらどうなの?」
前山「ん? 別に」
沙也加「何とも思わないの?」
前山「うん」
沙也加「せいせいする?」
前山「うん。お前しつこいんだもん、だって」
すすり泣きながら、沙也加はこう言葉を継いだ。
沙也加「『死ね』って言わないで。叩きなよ、じゃあ。『殺すぞ』とかさあ、『死ね』とか言うんだったら。言うこと聞かせればいいじゃん、それで」
前山「そんなことしないよ。殴ったらだって俺、悪くなるじゃん」
沙也加「そんなこと言ったって、『死ね』って言ったって、『殺すぞ』って言ったって、おんなじだよ」
前山「いいじゃん、もう死ねば。みんな喜ぶんじゃない?」
沙也加「私が死んだら?」
前山「うん」
沙也加「なんでそんなこと言えるの? みんなに嫌われてるってこと?」
前山「うん」
しばらく沈黙が続き、沙也加は声を絞り出す。
沙也加「ねえ? (涙声で)ねえ、そんな酷いこと言わないでお願いだから」
そして、音声データの最後に収められていたのは、
沙也加「『大好きだ』って、『こんなに合う人いない』って言ったから付いてきたんだよ……」
将来を見据えたはずの恋人に縋(すが)りつく言葉だった。