他人の話を進んで聞くというタイプの人間が極端に不足していた時代であったらしく、誰も彼もが親切にそして熱心に語ってくれた。
見ず知らずの人間が何処かで僕の噂を聞きつけ、わざわざ話しにやって来たりもした。
理由こそわからなかったけれど、誰もが誰かに対して、あるいはまた世界に対して何かを懸命に伝えたがっていた。
それは僕に、段ボール箱にぎっしりと詰め込まれた猿の群れを思わせた僕はそういった猿たちを一匹ずつ箱から取り出しては丁寧にほこりを払い、尻をパンと叩いて草原に放してやった。彼らのその後の行方はわからない。
きっと何処かでどんぐりでも齧りながら死滅してしまったのだろう。結局はそういう運命であったのだ。