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抜粋
タモリさんが司会を務める音楽番組「ミュージックステーション」(テレビ朝日)が10月、ギネス世界記録に認定された。
番組で一番印象的な出来事として、タモリさんは次のように語った。「それはやっぱりt.A.T.u.(タトゥー)でしょう。あれは忘れられないですし、あれを超える出来事はないでしょうね……」

タトゥー。1999年に結成されたロシアのリェーナ・カーチナさん(37)とユーリャ・ボルコワさん(36)の女性デュオだ。2人は当時10代で、抜群の歌唱力と反抗的でレズビアンという設定が注目され、一躍世界中で人気になった。日本でもファーストアルバムが大ヒットした。

タトゥーは人気絶頂だった2003年6月、初めて来日した。そのとき出演したのが「ミュージックステーション」だった。彼女たちはそこで衝撃的な「事件」を起こすことになる。
番組冒頭で姿を見せていた2人は、いざ歌う順番が回ってきたときにはこつ然と姿を消してしまった。生放送中に起きた前代未聞の「ドタキャン」劇で、タモリさんが「忘れられない」というのも当然だ。2人は日頃から奔放な行動を見せていたこともあって、ドタキャンは完全に2人の「わがまま」と受け止められた。後日開いた記者会見でも謝罪の言葉はなく、「何も悪いことはしていない」と開き直った。日本中が怒りにわいたようなバッシングが起きた。

それから10年後。私は期せずして彼女たちを取材する機会を得た。2011年にモスクワ特派員となった私は、ロシアがらみでぜひとも取材したいテーマがいくつかあったが、そのうちの一つがタトゥーだった。日本のエンターテイメント業界ではすっかり忘れられてしまった2人組は今何をしていて、ドタキャンについてどう思っているのか。本人たちの口から直接聞きたかった。

2人の話から当時を再現するとこんな感じだ。

ミュージックステーションの冒頭後、2人はいったん控室に戻り、出演を待っていた。そこにプロデューサーのイワン・シャポワロフ氏から電話が入り、こう指示された。
「2人とも今すぐそこを立ち去れ」
2人は戸惑い、「何で?何で?」と聞き返した。でもシャポワロフ氏は「理由はあとで話す」の一点張り。まだ10代だった2人は彼の指示に従わざるを得ず、番組スタッフの制止を振り切ってテレビ局を立ち去った。

2人はその後、シャポワロフ氏から理由を明かされた。「話題作りのため」だったという。シャポワロフ氏はスキャンダラスな過激な騒動を次々と起こしてはタトゥーの人気をあおっていた。今で言う「炎上商法」(炎上マーケティング)だ。

反抗的な言動やレズビアンという設定も彼の「戦略」で、イギリスでも公演を直前になってキャンセルするなど、各地で騒ぎを起こしていった。
「ミュージックステーション」でのドタキャンもその一環だったが、日本では完全に裏目に出た。カーチナさんはインタビューでこう語った。
「バーニャ(イワンの愛称)は時間に厳しい日本の国民性を完全に見誤った。私たちも若くて彼の言いなりだった」

結局、シャポワロフ氏の路線は2人からも反発を招くようになり、「ミュージックステーション」のドタキャン劇から1年後、タトゥーは彼とのプロデューサー契約を解除した。
タトゥーは再出発し、ロシアや欧米での活動は順調だったが、日本での人気は戻らなかった。「ごめんなさい」という謝罪ソングも作って披露したが、効果はなかった。

カーチナさんはこう悔やんだ。
「あの一件以来、私たちは完全に日本市場を失ったのです。彼は深刻な失敗をしましたし、彼と一緒にやっていた私たちの失敗でもあります。起こしてしまったことは変えられません。日本の皆さんを傷つけてしまったことを謝りたいです。もしすべてを変えられるなら、変えたい」
ボルコワさんも「ドタキャン以降、日本ではタトゥーという存在はタブー扱いでしょう。今でこそ、あの行動がどんなにひどいものだったか理解できます」

2人にとってシャポワロフ氏は「権力者」であり、まさに「従属状態」に置かれていた、というのだ。

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