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映画の素材を無断で使用し、字幕やナレーションを付けた10分ほどの動画でストーリーを明かすファスト映画。海賊版対策などを行うコンテンツ海外流通促進機構(CODA)によって、6月下旬からの一連の刑事摘発に関する報告会が本日9月3日に東京・参議院議員会館で行われた。

ファスト映画は新型コロナウイルスの影響が広がった2020年春頃からYouTubeへの投稿が急増。CODAの6月14日時点の調査によると、1年だけで少なくとも55のアカウントから2100本余りの動画の投稿があった。短時間で映画の物語が最初から最後までわかることから、映画が鑑賞されなくなることにつながると業界が問題視。CODAの試算では被害総額は約956億円と推計された。

6月23日、ファスト映画をめぐる著作権法違反の疑いで男女3名が摘発。彼らは東宝が著作権を有する「アイアムアヒーロー」ほか2作品、日活が著作権を有する「冷たい熱帯魚」ほか1作品を権利者に無断で10分程度に編集し、YouTubeにアップロードして広告収益を得ていた。7月7日には、動画のナレーションを担当した者など新たな関係者2名を書類送検。そして7月14日、最初に逮捕された3名が著作権法違反の罪で起訴された。ナレーションを担当した男性1名は、7月15日付けで映画会社の1社と1000万円超の賠償金を支払うことなどを条件に和解が成立している。

CODA代表理事の後藤健郎は、ファスト映画の隆盛を「コロナの巣ごもり需要を背景にZ世代に突き刺さった」と分析。CODAによる国際執行プロジェクトでリーガルディレクターを務めた弁護士の中島博之も「海賊版サイトや著作権侵害者は、大半が金銭目的。ファスト映画に関してはコロナ禍の巣ごもりでインターネットへのアクセスが急増し、これに目を付けた人がYouTubeで視聴回数を稼げる動画を投稿し、広告収入を得ようとしていた」と説明する。

後藤は今回の摘発はCODAが弁護士の協力による法的措置で早期解決した成功例と言及。実際の動きとしては、Googleに対する国際執行手続き(サビーナ)によってアメリカのサーバーから発信者の情報を取得し、宮城県警の捜査と連携して運営者を特定。ファスト映画の作成・アップロードなどに関わった5名の摘発に至った。一連の報道後、チャンネルの削除、ファスト映画の投稿の削除が相次ぎ、現在55のアカウントは8まで減少しているという。今回、宮城県警に摘発された5名は組織的に著作権侵害を行っていたこと、また法人が組織的に運営していたチャンネルが存在したことも明かされた。

中島は著作権侵害にする「毅然とした対策」の重要性も説く。中島曰く、著作権の侵害は初犯の場合だと罰金30万円前後や執行猶予が付く軽めの罰則がほとんど。「1000万円稼いだのに、罰金30万円を払って終わりということもある。次はもっと巧妙に著作権を侵害して儲けようと再犯につながる可能性もある」と説明。「侵害によって得た利益の没収と刑事責任の追求だけでなく、民事によって損害賠償請求をしっかりと行い、著作権侵害を行うことのリスクの高さを世に示すことが重要」と続けた。

また「企業が著作権侵害に厳しいイメージを持つと、被害に遭いにくくなるというメリットもある。例えばディズニーはそのイメージがあるので、YouTube上にディズニーのアニメをアップロードしている人はいない。
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