■あの人は今 元日本ハムファイターズ 中田翔さん(37歳)

2026年、日本シリーズ。 それをTVで見つめる男がいた。
18歳で将来を嘱望されプロ入りした、中田翔さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」
若き日を回想する中田さんは、どこか寂しげだ。
「いまだに当時の夢を見ることがあるんですよ。日本シリーズで俺がサヨナラホームランを打つ夢を」

大阪桐蔭高校を卒業後、ドラフトで競合の末、日本ハムに入団。チームの主砲として日本一にも貢献した。
中田さんは32歳の時に不調に陥り、気持ちの浮き沈みを繰り返すことになる。
そんな折、チームメイトへの暴行事件を起こし無期限の出場停止処分を科せられる。
これをもって社会的信用を失い、日ハムから戦力外通告を受けた。
今はお好み焼き屋を営む傍ら、地元の少年野球のコーチを勤めている。

●看板の屋号の文字は現日ハム監督の斎藤佑樹氏の手によるものだ。
「いらっしゃい」。山陽本線・新白島駅から歩いて75分。「暴力」のえび茶色の看板を目印に店舗内に入ると、白いタンクトップを着た中田さんと舎弟杉谷さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。看板の『暴力』という文字は斎藤監督に左足で
書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった
おかげで、地方から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「お好み焼き好きは飛行機に乗って本場・大阪まで食べ歩きに出かける時代でしょ。
ボクのお好み焼き理論はヨーグルトを使うのが特徴だから、マヨネーズを使うのが正しいと信じ込んでる大阪人にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつてのライバルで現ロッテの唐川や、ヒートベアーズ所属の佐藤由規について尋ねると……
「あいつら俺より下手やったんですけどね(笑) 」と、おどけ
「後輩いじりなんてやらなければよかったと思いました」
「コンプライアンスさえ無ければって…歯がゆいですけど」
「今はもう現役に未練はありません。今度は、お好み焼きで日本一を狙いますよ(笑)」

(写真)必死の形相で杉谷さんに関節技をかける中田さん