前田啓介(レミオロメン)は、なぜオリーブ農園をはじめたのか。その先にあるバンドへの思い
7/31(土) 15:50 音楽と人
https://news.yahoo.co.jp/articles/4e1f2ad7b0eb2d1e0680fdfb007b0a54175388ff
前田啓介(レミオロメン)
https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20210731-00010000-ongakuto-000-1-view.jpg


多くのミュージシャンを取材してきた。
編集長になってから20年。ずっと取材を続けてきた人もいる。しかし逆に、まったく逢わなくなってしまう人たちのほうが遥かに多い。昔、毎月のように会って、リリースのたびに取材して、ライヴに行って、時には酒を呑んだり、プライベートを深く知るようになった人ですら、時と共に疎遠になっていく。
50歳を過ぎたあたりから、無性にその人たちに逢いたくなった。編集者としての終活なのか、最後まで活動を支えきれなかった贖罪なのか、自分でもよくわからないが、売れた売れない関係なく、編集者としての自分に何らかの影響を与えた人と、今、話をしたかった。
今回は、もう10年近く活動を休止しているレミオロメン、前田啓介に会いに行った。

◆音楽は耳から感じとって心に届くけど、オリーブオイルは口から入って心に届く

(※中略)

◆山梨で誰もオリーブオイル搾ってないのに、それやれたらきっと感動するぞ、って
 
ーー啓介くんはなんでオリーブに興味を持つようになったんですか?

「うーんと……どこから話そうかな。まずレミオロメンをずっとやってきたけど。あの時期、一緒に音楽をやるバランスが、みんなの中で崩れてたのは確かなんですよね。そのちょっと前から、こっちと東京を行き来する生活をしてたんですけど、田舎で刺激されることも多かったし、こっちでも音楽活動はできるなと思ったから、活動休止という選択をしたあと、東京の家は引き払って、完全にこっちに戻ってきたんです」

ーーなるほど。

「それで地元の呑み屋に顔を出すようになると、農家の人とか、ワインの醸造家の人たちと知り合うんですよ。その人たちと話してると、山梨にはワインや味噌、野菜や肉、美味しいものがたくさんあるのに、それをつないでいくものがないよね、って話になって。それ、オリーブオイルじゃないか、って思ったんですよ。俺、音楽からはちょっと距離を置こうとしてたけど、作ること自体は大好きだから、だったら俺がやってみようかな、って。小豆島やイタリア、ギリシャに行って、やり方を勉強しながら始めたのが最初ですね」

ーーまず東京から離れることから始まったんだ?

「うん。僕の考え方だけど、東京っていろいろ物はあるし、お金を払えば何でもできるんだけど……こう……寂しかったんですよね。空っぽだった。なにやっても虚しくて」

ーー昔はあんなアーバンな生活を送っていたけど(笑)。

「いわゆるロックミュージシャン的な生活でしたよね(笑)。朝遅く起きて、レコーディングや取材して、夜は呑みに行く。高いワイン空けて、家でみんなで朝まで呑む(笑)。なんかそういう生活も、楽しめなくなってたんだろうな。今思えば」

ーーあの頃からオリーブ大好きだったもんね。

「でもまさか自分で作るとは思ってもなかった(笑)。とにかく研究したんです。まず山梨でやってる人が見当たらなかったから、オリーブオイルよりもまず、オリーブの木が育つのかどうか」

ーー山梨は寒いですもんね。

「内陸だから温度の下がり方が違うんです。寒暖差が激しい。オリーブが名産の小豆島やイタリア、ギリシャとは根本的に気候が違う。そんなところで本当にできるのか、初めて搾油する日まで、ずっと不安でした」

ーーなんでそんな危ない橋を渡ってまでやろうとしたんですか。

「慣れてるから(笑)。そもそも、プロミュージシャンになるって決めて、高校辞めて上京した人間だし。あと当時、まだ32歳でしたからね。エネルギーがあった。山梨で誰もオリーブオイル搾ったことないのに、それやれたらきっと感動するぞ、って(笑)。そういう単純な目標で突っ走れるタイプなんですよ」

ーーすごいな。本当にあまり考えてない(笑)。