日刊ゲンダイ
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2021年07月06日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL

 ランナーはなぜ坂を求めるのか…テレ朝「全力坂」がイケメン編を放送

 女性が息を弾ませながら坂を上りきる――。テレビ朝日系の「全力坂」は、女性のダッシュシーンを流すのみのシュールな番組ながら、平日深夜の人気ミニ番組だ。放送16年目を迎え、今月から月に2回はイケメン編を放送するという。

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 都心の人気ランニングスポットの皇居と駒沢公園で男女それぞれ10人に「全力坂」の番組改革について話を聞くと、男女で意見が割れた。皇居を走っていた40代の男性はこう言う。

「コロナ禍で飲み会ができなくなり、飲み仲間の男女6人で月に1回、皇居を走るようになりました。そのうちの一人の女性が好みのスレンダー体形で、後ろを走ると、ついお尻から脚に目が行ってしまって。ふだんは一人で走るから、こういうラン会は楽しい。『全力坂』も、その回がキレイな女性だと、つい見てしまいます。ハァハァしている女性の後ろ姿をとらえるアングルがいい」

 男性は全員が好みのタイプ、もしくは美人であることを視聴の前提としていたが、女性は10人中7人が「イケメンである必要はないし、異性としての好みも関係ない」と口をそろえる。駒沢公園の40代女性は「ジャニーズ系が汗もかかずに颯爽と走っている姿は見たくない」という。何がいいのか。その女性が続ける。

「断然マッチョ。2年前のラグビーW杯で目覚めちゃいました。ムッキムキの男性が汗まみれでぶつかり合って、トライを目指して走り抜ける姿がカッコいい。しかも、スタジアムの観客も、ラグビー部員みたいな体つきで、めっちゃ目の保養でした。涼しげなイケメンが走ってもねぇ……」

 アンチイケメン派7人中4人が細マッチョ、3人がガチムチのランナーを求めていた。イケメン派は、わずか3人の少数派だ。

 アラフィフランナーからすると、イケメンでなくていいのはうれしいが、子供の運動会の父兄競走で妻に褒められたことはないような……。そもそも鈍足は論外なのか。それはともかく、走る人の中には“坂愛”を募らせた人もいた。男性は4人、女性は3人が「アップダウンの大きいマラソン大会が好き」と語っていた。

 シューズブランド「ALTRA」を展開するストライドが昨年3月と6月に行った調査によると、59.5%は自粛期間の前と比べてウオーキングやランニングを行う機会が「増えた」と回答。その増加を反映してか、8割近くが公園などでのランナーの数を「増えた」と感じている。

 冒頭の皇居ランの男性も、このタイプで“坂ラブ派”の一人。昨年11月には、箱根駅伝の山登り・5区の斜度を超える鬼坂のマラソン大会を完走したというから、ちょっとヘンタイだ。

 別の女性は、スキー場で知られる越後湯沢や日本最西端・与那国島の大会に出場したらしい。与那国はビーチかと思いきや、「アップダウンが激しい上、大会がある11月は暑いから、めっちゃきつい」とハードなのに笑っていた。“坂愛”をこじらせたらしい。

元NBAのトレーナーが初心者の克服法を解説

「走り続けて体が少しずつできてくると、より距離を延ばしたり、タイムを短縮したり、さらに痩せたりするのが楽しくて、それがランニングを続けるモチベーションになります。でも、いずれも限界があり、壁ができる。そうすると、タイム短縮や距離延長ではなく、過酷な状況の克服がモチベーション維持の材料に変わり、ランナーの中には坂を求める人がいるのでしょう」

 こう言うのは、米NBAロサンゼルス・レイカーズで指導経験もあるトレーナーの松崎由江さん。今はボディープロデュース「レインボー」(大阪市)の代表で、会員にも“坂ラブ派”が少なくないそうだ。

「坂ランは、準備などを怠ると、ケガをしやすいのですが、正しくやればメリットが大きい。アンチエイジング効果も高いので、平地ランの人にもお勧めです」(松崎氏)

 坂初心者はどんなことに注意すればいいか。松崎氏に詳しく聞いた。

「坂道を上るときは、ふくらはぎやハムストリングスを中心に脚の後ろ側を、下るときは太ももの前やすねなど脚の前側の筋肉を酷使します。平地より重力がかかる分、その疲労度は高い。坂道ランを組み込むときは、必ず坂用の筋肉を鍛えてから行うことです。そのためにはスクワット。週2回くらいスクワットをやって、スクワットが楽にできるまでは平地ランのみにすべきでしょう」

 脚の幅を広げて行うワイドスクワット、狭く取るナロースクワット、脚を前後に広げて一方の膝を床に近づけるレンジスクワットの3つを各10回ずつ3セット。