Number06/03 17:05
https://number.bunshun.jp/articles/-/848298

10000mで27分台の記録をもつ大学生ランナーは、かつては在学中から世界大会に出場するほどの実力をもった選手だけ。ほんの一握りに過ぎなかった。もちろん今も27分台を出すのは簡単なことではないが、現在は以前ほどは珍しいことではなくなったのも事実だろう。

それでも、その27分台ランナーが、同時期に同じ大学のチームに複数人在籍するのは、かなり珍しい例といっていい。以前には設楽啓太・悠太兄弟が東洋大在学中に27分台をマークしたことがあったが、3選手も在籍しているのは、大学駅伝史上初めてのことだ。これをやってのけたのが早稲田大学だ。昨年12月の日本選手権で、中谷雄飛、太田直希(ともに現4年)が大台に突入すると、今年4月10日には井川龍人(3年)がチーム3人目の27分台ランナーになった。

「確かに初めてのことかもしれませんが、秋になったら、27分台を5人ぐらい抱えるチームが出てくるんじゃないかなと思っています。駒澤さんなんかがそうなると思いますよ」

相楽豊駅伝監督はいたって冷静に現状をとらえている。たしかに、駒澤大もすでに田澤廉(3年)、鈴木芽吹(2年)の2人の27分台ランナーを擁し、唐澤拓海(2年)もあと一歩まできている。だが、相楽監督の言葉は「でも……」と続く。

「うちはうちで、千明(龍之佑、4年)とか、まだ何人か27分台が行けると思っています」

その相楽監督の言葉を裏付けるかのように、5月20日から23日に開催された関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)では、むしろ27分台トリオ以外の選手の活躍が目立った。

「三浦が出ていない3000m障害は、優勝が絶対条件」
4日間フル稼働だったのは、2年生の菖蒲敦司。1500mと3000m障害に出場し、それぞれの予選、決勝と4日間で4レースがあり、連日トラックを駆け回った。

1500mでは、同級生の三浦龍司(順大)にラストスパートで引き離されたが、2位と奮闘。先に仕掛ける積極性も見せた。

そして、最終日の3000m障害決勝では、疲労を抱えながらも勝負強さを発揮した。

「3000m障害は、三浦が出ていないので、優勝は絶対条件かなとずっと感じていました」

ラスト700mで先頭に立つと、追い風に乗って後続をぐんぐん引き離し、自己ベストで有言実行のタイトルを手にした。

昨年度、コロナ禍の自主練習期間でスピードの強化に取り組んだというが、その成果が2年目に発揮されたわけだ。

相楽監督「まずは5000mでしっかり」
「本来は5000mで出場を狙っていたんです」と菖蒲は明かすが、「5000m、10000mは(候補選手が)渋滞していて……」(相楽監督)、菖蒲は高校時代に実績のある3000m障害に回ることになった。さらに、1500mに出場予定だった選手の故障もあって、2種目に挑み、結果を残した。

「元々持っていたスパート力にさらに磨きがかかったし、本人もかなり自信を持ってきているので、まずは5000mでしっかり形として出してもらいたい。

長い距離も、3月の学生ハーフで15kmまでは先頭集団でレースができた。それ以降は足が止まっちゃったんだけど、練習量を増やしていけば、長い距離もいけるっていう手応えは本人にもある。1500mからハーフマラソンまでいける選手なので、今後の飛躍を期待したい1人ですね」

相楽監督も菖蒲の2年目に高い期待を寄せている。

ルーキーイヤーの昨年度は全日本大学駅伝で5区を走ったが、区間9位と振るわなかった。箱根駅伝は16人のエントリーメンバーには入ったものの、諸冨湧、北村光と同級生が2人も出場するなか、出走は叶わなかった。

だが、菖蒲はもともと、スピードだけでなく、ロードでも強さを発揮できる選手だ。高校2年時の全国都道府県対抗男子駅伝では、1区で上級生を破って区間賞を獲得した実績がある。そのポテンシャルの高さは折り紙付きだ。トラックの勢いそのままに、今季こそ駅伝でも菖蒲の活躍が見られそうだ。

早大卒オリンピアンに割って入った千明龍之佑
もう一人、新シーズンに入って絶好調なのが、駅伝主将でもある千明だ。5月4日の法大競技会では、5000mでそれまでの自己記録を一気に約23秒も塗り替え、13分31秒52の好記録をマークした。この記録は伝統ある早大競走部で歴代5位の記録に相当する。ちなみに、歴代1〜4位、6位の早大OBはというと、1位・竹澤健介、2位・大迫傑、3位・渡辺康幸、4位・花田勝彦、6位・瀬古利彦と、全員がオリンピアン。錚々たる顔ぶれの中に、千明は割って入った。

千明は、単なるスポーツ推薦ではなく、“オリンピックや世界選手権など、国際的な競技大会への出場経験や、同等の競技能力を有していることが条件”という狭き門のトップアスリート推薦で、中谷とともに早大に入学した。(以下リンク先で)