https://news.yahoo.co.jp/articles/564d7955e56dfc1b211f1915adfd77ea48b9682a
2020−21シーズンは大迫勇也(ブレーメン)にとって非常に厳しいものになってしまった。

 リーグ戦の出場は24試合だが、そのうちスタメンは7試合にすぎず、途中出場17試合。ベンチが8試合で、出場時間の合計はわずかに752分という少なさだ。
 それよりも深刻なのは、リーグ戦で無得点に終わってしまったことだろう。これは大迫が2009年に鹿島アントラーズでプロデビューして以来、初めてのことである。
ちなみにドイツ杯では、準々決勝レーゲンスブルク戦で、チームを1−0の勝利に導く重要なゴールを決めているのだが、結局、シーズンを通してこの1点のみという何とも寂しい結果に終わった。

 とはいえ、フロリアン・コーフェルト前監督からの信頼は決して低くはなかった。ドイツ杯のレーゲンスブルク戦では、「ユウヤはチームにとって重要なゴールを決めてくれる」と、称えるほどの存在だった。

むしろ問題はピッチ外にあった。

 2018年の加入当初はともかく、時間が経つとともに、地元メディアから大迫は、意思疎通のできない難しい存在として扱われるようになった。
「ボディランゲージができない」「ファンに対して感情表現ができない」という書かれ方をしてきた。
 今年1月の移籍マーケットが開いている時期には、「大迫は東京五輪を目指しており、オーバーエイジ枠でほぼ選ばれるだろうから、日本のクラブへ移籍するだろう(つまりブレーメンでは不要)」などと書かれた。
 そのたびに、コーフェルト監督はじめクラブ幹部が「大迫はブレーメンに必要な選手だ」と弁明せざるを得なかった。

 大迫が地元メディアから「難しい存在」として扱われるのは、ある意味では仕方がないところもある。
大迫はメディア対応を得意としない。あまり好んで喋ることもない。決して愛想のいい選手でも、多弁な選手でもない。
日本人同士であれば、それはそれで個性のひとつだと理解することもできるが、それは海外ではなかなか伝わりづらい。

 2020−21シーズンはコロナ対策のため、通常の試合後のミックスゾーンでの取材対応はまったく行なわれなかった。
その分、ブレーメンでは毎週のようにリモートで選手の記者会見を行ない、選手が順番に登場したが、シーズンを通して、大迫は一度もその会見に登場しなかった。

 それ以前から、ドイツ人記者が大迫のコメントが欲しいシーンで、大迫がノーコメントを貫くということがあった。
意思疎通できる選手に対しては、意思疎通できない選手に比べて好感を持つのは、自然なことかもしれない。そのうちに大迫が厳しく書かれることが増えていった。

 大迫がドイツ語を話せないわけではない。かつては活躍した試合の後、自分からドイツ人記者たちの前に出て話をすることもあった。
加入した当初はドイツ語でクラブの動画撮影に応じており、コミュニケーションはできるのだ。
 だが現在、地元メディアは「大迫は2部の予算では高給すぎる」と書く。

今後について大迫自身は、「フォワードで使ってくれる欧州のチーム」を第一希望としているが、日本のクラブも含めてどうなるかは「わからない」と言う。
2022年まで契約の残るブレーメンで、新監督がフォワードで起用してくれるという目途がたてば、残留という可能性もあるが、まずはブンデスの1部でチームを探すことになるのだろう。

 いずれにせよ、今シーズンは見ることができなかった得点を、早いタイミングで期待したいものだ。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko