日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(63)は10日、都内でスポーツ報知の取材に応じ、白血病による長期療養を経て東京五輪代表入りを決めた競泳の池江璃花子(20)=ルネサンス=にSNSを通じて代表辞退や五輪への反対を求めるメッセージが寄せられた件について自身の見解を述べた。池江が矢面に立たされている状況に「非常に残念」と語り、ネット上における匿名での筋違いな選手への個人攻撃に疑問を呈した。

  顔も名前も見えない見当違いな書き込みが、池江を苦しめている。JOCの山下会長は「非常に残念。JOCとして、選手がこのような状況になっていることは申し訳なく思っている」と口を開いた。

 4月の競泳日本選手権で五輪切符をつかんだ池江のもとには、五輪反対派から「辞退して」「反対に声をあげて」などの匿名のコメントが寄せられていた。7日夜にツイッターを連投し、「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」「選手個人に当てるのはとても苦しいです」と自らが置かれた立場を明かし、大きな反響を呼んだ。これら長文の投稿に目を通した山下会長は「彼女の正直な思いが書かれていると思う。彼女にどうこうできる問題じゃない」とおもんぱかった。

 新型コロナウイルスの感染拡大は収束に向かわぬまま、5月を迎えた。五輪開催の是非について、議論が白熱していることをJOC会長として、もちろん理解している。「いろんな人がいて、様々な考え方があっていい。それが社会だと思う」と強調した。「ただ、感情を出すときは、相手の状況も理解すること。一人の人間としての責任を自覚して、感情の赴くままではなく、ちゃんと理解して、自分の名前を明らかにして出すというのが基本。匿名で自分の感情のままに書くやり方そのものに、私は疑問を持っている」。匿名での選手個人への不条理な攻撃、意見の押しつけに苦言を呈した。

 アスリートが競技に集中する環境を作ることが、JOCの一つの大きな役割でもある。ネット上での匿名投稿への対策の難しさも踏まえつつ、山下会長は「いろんな試練を乗り越えてきた彼女が、自分のやるべきことに集中していけるように。ぜひ温かく見守っていただきたい」と訴えた。

  ◆東京五輪代表内定後の池江

 ▽4月4日 日本選手権の女子100メートルバタフライを57秒77で制し、400メートルメドレーリレー代表決定。大会で4冠を達成し、400メートルリレー代表も決定。

 ▽17日 日大の壮行会に出席し「池江璃花子が世界に戻ってきたと証明できるよう頑張りたい」と決意。

 ▽5月7日 自身のSNSに五輪反対派から「辞退して」などのコメントが寄せられていることを明かした上で「決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけ」「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」「この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」などと投稿。

 ▽9日 千葉県水連公認大会で6レースを泳ぎ「体はきつかったですが、楽しめました」とコメント。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0252abfff22b68c5f2e00e75d7b69318255e3f45
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