危険な“暴走”にますます拍車がかかっている。東京五輪・パラリンピック組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、日本政府、東京都、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表が大会の準備状況などを確認し合う「5者協議」が28日、オンラインで開かれた。組織委・橋本聖子会長、政府・丸川珠代五輪相、東京都・小池百合子知事、IOCのトーマス・バッハ会長、IPCのアンドリュー・パーソンズ会長が代表者として議論し、観客上限数については6月に判断することで合意した。

感染力が強いとされる新型コロナウイルスの変異株の拡大が日本国内で止まらないことを受け、橋本会長は協議後「現に緊急事態宣言の下でこうした状況が起きている以上、ギリギリの判断として無観客という覚悟を持っている。だが他方で状況が許せば、より多くの観客の皆さんに見ていただきたい希望も持っている」との心境を吐露。観客上限数の判断基準については「医療に支障を来すような状況になったときは、やはり安心安全を最優先して無観客ということも決断しなければいけない時が来るんだろうと思っております」と険しい表情で説明した。

■ 不気味なほど日本をヨイショするバッハ会長

 当初から目標にしていた満員の集客に関しては「現段階で非常に厳しいと理解をしている」と半ば諦めの境地であることも口にした。すでに東京五輪は外国からの訪日客の受け入れを断念し、コロナ第4波にさいなまれている日本国内の現況と照らし合わせれば、まともな思考の持ち主なら「フルハウス開催」などあり得ないことぐらい理解して然るべきである。

 だが、日本国民の大半の最大の関心事は東京五輪の観客上限数などではない。大会開催の有無であり、求められているのは「大会中止」だ。しかしながら各主要メディア等のアンケート調査にも反映されているように大多数から「開催反対」の大ブーイングが沸き起こっているにもかかわらず、この日「5者協議」に集まった代表者は一同にシラを切ったままだった
特にバッハ会長は現在も開催地・東京都に発令中の緊急事態宣言について「尊重している」と持ち上げたばかりか、さらに続けて「日本の社会は連帯感をもってしなやかに対応しており、大きな称賛をもっている。精神的な粘り強さと、へこたれない精神をもっている。それは歴史が証明している。逆境を乗り越えてきている。五輪も乗り越えることが可能だ。献身的な努力で未曽有のチャレンジをしている」と不気味なほどに日本全体をヨイショしまくった。

 そして最後には「(新型コロナウイルスの)リスクを最小化し、日本国民に安心してもらえる五輪になる」とも述べており、要は五輪開催反対のムードを沈静化させるため「へこたれない精神」などという陳腐な言葉で日本人の勇敢さを過剰に称賛し、何とか同調してもらおうという魂胆だったのはミエミエであり明白だ。

■ 分科会・尾身会長は「開催議論やるべき」と警鐘

 しかし、これは案の定、完全な逆効果だった。ネット上やSNS等のコメントでも散見されるようにバッハ会長の真意はすっかり見透かされ、世の開催反対ムードを単に煽っただけで火に油を注いでしまった格好だ。

 加えてバッハ会長の「へこたれない精神」発言とそん色ないほどに多くの国民の怒りを買ったのが、橋本会長のコメントであった。

 この日は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が衆院厚生労働委員会の場で、東京五輪・パラリンピックの開催について「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫状況を踏まえて議論をしっかりやるべき時期に私は来たと思います」と述べて大きな波紋を呼んだ。




4/29(木) 16:01
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