(舛添 要一:国際政治学者)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、政府は23日、大阪府、京都府、兵庫県、東京都に緊急事態宣言を発令した。期間は4月25日から5月11日までである。

21日の感染者が過去最多の1242人に達した大阪では医療崩壊状態が起こっている。だが対策の陣頭指揮を執る大阪府の吉村洋文知事の言動には大いに首を傾げざるを得ない。

■ 台湾や英国、イスラエルは「コロナ封じ込め」に成功しているのに・・・

 感染症対策の基本は公平な情報公開だ。それなのに吉村知事は民放の特定のテレビ番組に出まくっている。これでは情報の偏りが生じてしまう。「テレビの出る暇があったら仕事をしろ」という批判の声が高まるのは当然である。

 ところが、その悪い例を閣僚や総理大臣まで真似ている。感染症の危機管理の原則に反する行為である。民放のテレビ局は視聴率を上げるために、感染症対策に当たる大臣や知事を生出演させる。政治家にとっても支持率を上げるための好機会である。出演を拒否され、他局に出演されると困るので、知事や大臣が出演を快諾すると、テレビ局は番組では厳しい批判はしない。これでは、国民を代表して権力を監視するという役割を放棄してしまったと言われても仕方あるまい。

 とくに大阪でこの傾向が強い。そして、それを上手く利用して権力を獲得したのが維新の会である。だが、新型コロナウイルスは生易しい相手ではなかった。第4波を到来させることによって、その虚飾の仮面を剥ぎ取られつつある。

 因みに、2009年に流行した新型インフルエンザに厚労大臣として対応した私は、民放テレビ局の特定の番組には一切出演しなかった。国民に伝えたい情報があるときには、深夜は1時まで、早朝は6時以降、どの時間帯でも緊急に記者会見を開いたものである。これだと全マスコミに公平に情報を流すことができるからである。

 政治は結果責任である。中国は、ウイルスの封じ込めに成功した。独裁国家だからできるのだというのなら、台湾は民主主義を実行しているが、感染防止に最も成功している。また、イギリスやイスラエルでは、国民の半数以上が少なくとも1回はワクチン接種を終えており、日常生活が戻りつつある。両国は、日本と同じ先進民主主義国である。

■ 覚えていますか? 小池氏の選挙公約「東京版CDC」

 東京の感染も、22日には861人と、2度目の緊急事態宣言解除後で最多である。まさに大阪の感染状況を後追いしているようである。そのため、大阪府、兵庫県、京都府とともに、政府に緊急事態宣言の発令を要請したのである。

 小池百合子都知事は、20日に自民党の二階俊博幹事長と会談し、政府に緊急事態宣言を要請する意向を伝えたが、本来、会談すべき相手は西村康稔大臣である。菅義偉首相との関係がギクシャクしているためか、彼女は、二階幹事長を利用しまくっている。この長老政治家と気脈を通じているというイメージをマスコミを通じて拡散させることによって、自分の政治的価値を高めようという計算である。この政治家は、都民の命ではなく、自分の政治生命しか念頭にない。

4/24(土) 11:50
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d6ca87d35931c5b22971eab8ae661b13d5a7e6b?page=2