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 池江璃花子や松山英樹の頑張りの一方、この国にオリンピックを2度もやる資格があるのだろうかと、そんながっかりする問題が女性アスリートの盗撮だ。

 水泳、陸上、体操、あらゆる競技で男女均等化が進み、女子の競技レベルは格段に上がった。それを可能にしたのがギア改良で、肌の露出が増すと、そこをローアングルで狙う写真家が登場した――SNS時代、悪質な画像拡散は個人の尊厳を卑しめ、若者の心を傷つける。いやらしい人間は世界中にいる。日本だけではない。しかし、スポーツでこんな問題が起きるのは日本だけだ。感動とか言いながら、何とも情けない話である。

■マリア・シャラポアもカメラマンの標的に

 マリア・シャラポワは日本好きだった。ジュニア時代から来日し、ジャパンオープンでツアー初優勝、17歳でウィンブルドンの頂点に立ってからも毎年のように来日した。カメラマンは早朝から場所取りの列をつくり、その時の“流行語”が「胸ポチ」だ。シャツに突き出た乳首を強調した写真が人気の象徴となり、そのうち、それが代名詞になった。誰かに指摘されたのだろう、ある時期からシャラポワはニップルパッドをつけて日本のことを話さなくなった。

 テニスはもともと盗撮の温床で、最悪の例が連続幼女殺害事件の宮崎勤だった。有明テニスの森に通ってアンダースコートばかり撮っていたというから、決して野放しにできないのだが、問題はそこだけではない。

 最初に規制をかけたのは新体操で、フロアレベルでの撮影を禁じた。ただ、新体操の魅力はボール、リボンなどの手具と肉体の一体感で、この競技を最も美しく表現できるのが、緊張の一瞬を切り取る写真でもある。陸上競技でも、日本のアスリートは驚くほどきれいになり、彼女たちはいまこそ写真を撮ってもらいたいだろう。スポーツという肉体表現において、強くなることと美しくなることは同時進行で、写真は撮るべきなのだ。

 どうして日本でだけこの問題がクローズアップされるのか。カメラメーカーの国ということも一因かも知れない。昔の日本人観光客の目印は首からぶら下げたコンパクトカメラだった。いま、高性能のカメラをこれほど多くの人が持っている国は他にない。メーカー、スポーツカメラマンは、競技団体に規制を委ねるだけでなく、積極的に反盗撮キャンペーンを展開すべきだ。

 かつて日本の街には酔っぱらいが多く、酒に弱い人種といわれたが、もはやそんな酔態を見ることは稀になった。いやらしい心は消えなくとも、行動を変えることはできるはずだ。黒田清輝の裸婦画を隠した腰巻き事件は120年も前のこと。女性活躍なんていうレベルの話じゃない。

(武田薫/スポーツライター)

https://news.yahoo.co.jp/articles/d3e50f3fdb2e34702ce4c0ce3bd3069e804cf56c


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