女優として最も恵まれていただろう20代に、代表作を持てなかったのは彼女自身のせいなのか。それとも彼女を生かせなかった時代の責任なのか。

 文字通り「平らかに成る」時代。すべてが平均化され停滞した。

 ネット社会の到来もまた、社会の在りよう、人の意識を大きく変えた。憧れはすぐさま嫉妬に変わり、目立つものは標的とされ、スターであっても否応なく批判される。

 平均化される世の中において、あまりにも突出していた彼女は傷つけられ、生き方を変えていった。時代の象徴、それがスターだ。

 平成時代の光と影を、「宮沢りえ」の半生は浮き彫りにする。

(文中敬称略)