キックオフの笛が鳴り響いてすぐに、日本代表のトップ下に入った鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)は違和感を覚えた。それもいい意味での驚きが込められたものだった。
「相手が前から激しく来るだろう、とみんなで言っていたんですけど、思ったよりも間延びしていたというか、中盤のところが空いているな、というイメージだったので。そのなかでパスを回そうとしてくれて、ボールを取ってカウンター、というのもけっこうできそうなシーンが多かった」
 韓国代表を日産スタジアムに迎えた25日の国際親善試合。通算で77回目の、ともにヨーロッパ組をそろえた一戦に限れば10年ぶりに実現した日韓戦は日本が前後半で3ゴールを奪い、守ってはシュート6本に抑えて零封。2011年8月に札幌ドームで行われた国際親善試合と同じ結果を手にした。
 通算成績はそれでも日本が14勝23分け40敗と大きく負け越していて、両国ともに国内組だけの陣容で臨んだ直近の東アジア選手権およびEAFF E-1サッカー選手権では、引き分けに連敗と3試合続けて白星から遠ざかっていた。なぜ森保ジャパンは2021年の初陣で快勝できたのか。
 当初は日本戦へ向けた招集メンバーに名前を連ねていたエース、FWソン・フンミン(トッテナム・ホットスパー)が故障で、FWファン・ヒチャン(ライプチヒ)が新型コロナウイルス感染の防疫上の理由でそれぞれ外れてしまった状況で、韓国を率いるパウロ・ベント監督は“奇策”を講じた。
 システムは[4−2−1−3]ながら、韓国の至宝と呼ばれる20歳のMFイ・ガンイン(バレンシア)を最前線の中央で、いわゆるゼロトップとして起用した。ポルトガル出身の指揮官は試合後のオンライン会見で「ヨーロッパ組がいれば勝てた、と言うべきではない。すべての責任は私にある」と断りを入れた上で、変則的な布陣を採用した理由をこう明かしている。
「日本のディフェンスラインをかく乱させるというか、そこで引き寄せて、スペースを作った上で隙を突いて、後ろの選手が入っていければと考えていた」
 しかし、日本は動じなかった。試合前の段階で4バックでも2種類、そして3バックもあると昨秋の韓国戦をチェックしたなかで得た情報をインプットした上で、キックオフ前のウォーミングアップを注視して「4枚で来るとわかった」と、キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)が続ける。
「それでも正直、予想とは違った。試合が始まってすぐに20番の選手(イ・ガンイン)が前線で張ることもないし、だからと言ってトップ下でもない中途半端な位置を取っている。おそらく誘っているんじゃないか、というのは感じ取りましたし、チームのなかでも『ピッチ上で問題を見つけて、自分たちで解決しよう』と話していたなかで、前半は上手くできたと思っています」

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3/26(金) 5:37配信