https://news.yahoo.co.jp/articles/d43394b6becb9bc9e832601614a902d7a8ebd820
 あの池上彰氏(70)が、にわかに批判の槍玉に――。1月30日放送の「池上彰のニュースそうだったのか!!  2021年世界はどうなる? リモートロケで見てみよう!」(テレ朝系)で司会を務めた池上氏は、番組中盤で米中関係の見通しに言及。その際、トランプ前大統領の対中姿勢について、こんな見解を披露した。

〈たとえば新疆ウイグル自治区の、あそこの多くの住民が強制収容所に入れられているとか、香港の民主化運動のひとたちが次々と捕まっているという。ああいう問題に対してトランプ大統領、これまで何も言ってきませんでしたからね。全然、こう、人権問題に関心がなかったわけですね〉

 すると、である。

「放送後、多くの抗議が局に寄せられたのです」

 とはテレ朝関係者。

「トランプ氏が2019年の米朝首脳会談で日本人拉致問題を提起したことを引き合いに“人権問題に無関心ではない”“誤報だ”とお怒りの声もありました」

 波紋はすぐに広まった。保守系論客を自任する自民党の和田政宗参院議員(46)も自身のツイッターに、

〈池上氏は周知の事実について全く事実に反する発言を行っており、キャスターとしてもジャーナリストとしても完全に失格〉

 と激烈な批判を投稿。

 実際のところトランプ氏の“人権感覚”はいかほどか。和田氏に改めて聞くと、

「トランプ氏は昨年6月、中国による新疆ウイグル自治区における民族弾圧の責任者に制裁を科す『ウイグル人権法案』に署名し、習近平政権を繰り返し非難してきました」

 と、トランプ氏が中国のウイグル政策に強い対応をとったと指摘。さらに、

「香港に関しても7月、中国当局による香港の自治侵害に制裁を科す『香港自治法案』に署名。続いて11月末には人権尊重や民主主義の確立を支援する『香港人権・民主主義法』にも署名しています。その後、中国の政府高官や中国企業への制裁も実施。トランプ氏は歴代政権中、最も強硬に中国の人権問題に取り組んできたんですよ」

 一方、池上氏からは、次のような説明が寄せられた。

「昨夏にボルトン元大統領補佐官が上梓した回顧録には、トランプ氏が習近平氏からウイグル族の収容施設建設の理由を説明された際、“正しいことであり、建設するべきだ”と応じたとの記述があります。同様の発言を他の政権幹部が耳にしていたという報道も、米国内にはあるんです」

 確かに、人権弾圧を推し進める中国に寄り添うかのような発言は、米国の複数のメディアが報じている。

「中国が定めた香港の『逃亡犯条例』についても、トランプ氏は“私は関わりたくない。米国も人権問題を抱えている”と述べ、問題から距離を置いたとあります。私も以前にボルトン氏にインタビューをした際、同じ趣旨の証言を得ています。米中問題に詳しい専門家の多くも“中国への厳しい対応は再選戦略のためだった”と分析しており、彼自身に関心がなかったことは明らか。私の発言は、これらの見解を短くまとめて表現したものです」

 信頼感があるだけに、視聴者からの目も厳しい池上氏。

「週刊新潮」2021年2月18日号 掲載

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