川淵三郎・日本サッカー協会相談役の“新会長就任”が一夜にして消え、東京五輪組織委員会のトップ選びは一から仕切り直しとなった。菅官邸まで乗り出し“五輪村”のボス選びは混迷を極めている。

 12日開催された組織委の理事会・評議員会の合同懇談会で検討されたのは「ポスト森」の選定方法。
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 会合終了後、会見した武藤敏郎事務総長によると、御手洗冨士夫名誉会長(キヤノン代表取締役会長兼社長CEO)をトップに据えた「選考検討委員会」を設置し、後任候補者を選定するという。35人の理事の中から、10人弱の検討委員会メンバーを男女比をほぼ半々にして選ぶ。しかし、新会長選出は、17日に見込まれる都と組織委、政府、IOC(国際オリンピック委員会)の4者会談に間に合いそうにないという

「選考検討委のメンバーは、外部から招かず理事の中から選ばれる。森さんに『わきまえておられる』と評された人たちです。選考は“お手盛り”になる可能性が高い」(組織委関係者)

「ポスト森」には、すでに複数の名前が挙がっている。筆頭は、菅官邸が後押ししているとみられる橋本聖子五輪担当相だ。他には、鈴木大地初代スポーツ庁長官や、三屋裕子・日本バスケットボール協会会長の名が囁かれている
「三屋氏は、今回ハシゴを外された川淵氏と近い。『川淵氏の無念を晴らす』という意味で推される可能性はあるでしょう。元女子マラソンの有森裕子氏や、元アーティスティックスイミングの小谷実可子氏を推す声もあります」(前出の組織委関係者)

森派も菅官邸も組織委を“傀儡”に
 複数の名前が飛び交う大混乱に乗じて、森一派も、菅官邸も、組織委を“傀儡”にするつもりだ。

「森前会長は辞任の意思を固めた直後、後任を巡って側近の遠藤利明元五輪相と相談。遠藤さんは橋本聖子を『ポスト森』に推したが森さんはあくまで川淵氏への“禅譲”を狙った。官邸にも相談せず勝手に川淵氏の後継を決めてしまった。でも、官邸から横ヤリが入って“川淵会長”が一夜にして消え、『橋本聖子新会長』の流れができています。森前会長の当初の計算は狂ったが、橋本氏も森前会長の直系の子分です。橋本大臣は、かつて森前会長が領袖を務め、現在も影響力が及ぶ自民党清和政策研究会所属。最終的には、森前会長と官邸の利害が一致しそうです」(自民党関係者)

さらに官邸は、橋本氏に五輪担当相を辞任させ、丸川珠代参院議員を五輪担当相に据えるプランを描いているという。もともと、「密室人事」で猛批判を招いていたのに、また政治的な思惑で後任を決めようというありさまだ。東京五輪に関し、著書がある作家の本間龍氏はこう言う。 

21/02/14 06:00
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