人生の「けり」つける シンガー・ソングライター、小椋佳が最後のアルバムに込めた思い
19時間前 産経
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最後のアルバム「もういいかい」を出したシンガー・ソングライター、小椋佳(左)と、小椋の書き下ろし曲でアルバム「まあだだよ」を出した歌手の林部智史
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 「シクラメンのかほり」「さらば青春」など、みずみずしい歌を多数手がけたシンガーソングライターの小椋佳(77)が、新作アルバム「もういいかい」(ユニバーサルミュージック)を出した。これを人生最後のアルバムにするという。「どこかで音楽活動にけりをつけたかった。喜寿なんでもういいだろうと」。昭和46年にアルバム「青春〜砂漠の少年〜」で鮮烈なデビューを果たして半世紀。今、人生の「けり」について語る。(聞き手 石井健)

■これが最後。つらいし、くたびれちゃった

 「もうね、声も出なくなってきているし、“老衰”ですよ」
 〈デビューから50年。昭和50年に布施明が「シクラメンのかほり」を歌い、大ヒットしてから、広く知られた。日本勧業銀行(現在のみずほ銀行)に勤めながら歌を作った。お堅い銀行マンがシンガーソングライターと「二足のわらじ」と話題になったものだ〉

 「音楽活動をやめようと思っています。アルバムはこれが最後。コロナでどうなるか分かりませんが、公演も5月から始まる全国公演で最後にします。もう、つらいんですよ。しんどいし、めんどくさい」

 〈「さらば青春」「俺たちの旅」など、青春の光と影をつづった名曲を次々と生み出した。人気俳優の中村雅俊らも歌い、多くの人の心に残っている。最近では、五木ひろしの名曲「山河」の歌詞を手がけた〉

 「喜寿(77歳)なんで、このへんでいいかなって感じ。父が79歳で死んでいるんです。最近、知り合いの訃報もいっぱいくるしね。僕もそろそろ」

 「創作意欲なんて、ないな。もう、ない。歌を作るのも、くたびれた。『こんなの新しくない』などと自分にダメ出しをして、斬新なものを生み出そうとするのですが、最近じゃ何も出てこない」

■コンマの歌、ピリオドの歌

 〈最後のアルバムだという「もういいかい」は、「山河」の再録音を含む13曲を収録。同時に若手歌手、林部智史(32)のために8曲を書き下ろした〉

 「去年の春から曲作りに着手しました。これが最後だと考えると、やっぱり身構えちゃいますね。1曲1曲、作るのに時間がかかりました。ちょうどコロナで閉じ籠もるしかなかったから集中はできた」

 「銀行員の頃だと、お正月休みが3日間あるでしょ。そこで大体30曲ぐらい書けましたもんね。50歳ぐらいまでは、歌が湧いてきましたもん、自然に」

 「林部さんには、平成30年に長野県のコンサートホールで出会った。昔だったら、僕もこういうふうに声を出せたな。そういう声を彼は出す。若い頃は、歌っていて自分に酔えましたもんね。若い日ならではの感動ですね」

 〈アルバム「もういいかい」は「開幕の歌」という曲で始まる。後進への助言や人生を振り返る歌が続き、「SO−LONG  GOOD−BYE」という別れの歌で幕を閉じる〉

 「曲順に強い意味はないんですけど、『山河』と『SO−LONG…』と続く最後の流れには、こだわりましたね。『山河』はもともと(演歌歌手の)五木ひろしさんのために作った歌(作曲は堀内孝雄)ですね。作ったときから、これは、きっと何かのエンディングの歌だろうという感じはあったんです。若い頃に歌う歌じゃないよね」

 「若い日は、歌詞が『疑問系』で終わって許された。『だろうか?』とか『じゃないの?』とか。しかし、年をとってくると断定しなきゃいけない。そういう歌を作らなきゃいけないなっていう気がしてきていましたね。コンマで終わっていた歌が、ピリオドになるっていうかな」

 「『もういいかい?』って問いかけているんじゃない。『もう、いいだろう』っていうタイトル」

 〈小椋の「もういいかい」は、20日に発売された。一方、林田は小椋の8曲を1枚のアルバムにまとめた。「まあだだよ」と名づけて「もういいかい」と同日、エイベックスから発売した〉

(※中略)