民放キー局の中でも、独特の番組編成で存在感を示すのがテレビ東京。それだけに、ネットを中心に語られる“テレ東伝説”にはさまざまなものがある。

中でも代表的なのが、「大事件が起こった時でも、テレ東は特番を放送せず、通常通りアニメを放送する」といったもの。こうした伝説について、同局の大庭竹修編成部長がデイリースポーツの取材に回答。その真偽と、テレ東ならではの“遠謀深慮”を明かした。

テレビ東京は1991年の湾岸戦争勃発時にも通常の放送を続け、2011年の東日本大震災発生の際も、他局より圧倒的に早く1日半ほどで通常編成に戻した。大庭竹部長は「その事実は認識しています。湾岸戦争の時は入社前だから分かりませんが…」と認めた上で、「東日本大震災の時には、当然一時報道を少ない人数で可能な限り行った。ただ、弊社は東北に系列局がないので、できること限られていた」と当時の状況を語った。

さらに「生命と安全と財産を守るための報道もやらなきゃいけゃいけない、でも一方で、いち早く日常に戻ろう、少しでも早く普段の生活に戻って、経済を立て直さなければいけない−という認識もありました」と、同局の方針を説明。「その意味で、東日本大震災の時は、いち早く通常編成に戻そう。その上で、必要な時に、必要なタイミングで報道番組を組む−と考えました」と、早期に通常の編成に戻した理由を明かした。

編成を戻したとしても、CMはしばらく復活しなかっただけに「売り上げが元に戻るというわけではなかった」という。それでも、テレビ東京としての社会に対する役割を全うすることが大事だった。とりわけ意識したのが、視聴者の心のケア。「子どもさんなんかは、震災の映像だけみていると心も辛くなってくるでしょうから、少しでも通常の生活を意識してもらえるようにと。震災報道を見たい方はそちらを、日常に戻りたい方はテレビ東京を見るという形で、選択をしていただければいい」と話しつつ、「湾岸戦争の時は、体制が追いついてなかったんじゃないかと思います。想像ですけどね」と笑った。

こうしたテレビ東京の感覚は、今でも全社的に息づいている、「選択肢の一つにあってもいいんじゃないかという意識ですかね。(キー局)6局が全部同じ事やっていても、見てる人は選択権がないじゃないですか、1つでも違う選択肢があったらいい。当然、絶対に国民の皆さまに伝えなければいけないことがあった時は、特別編成、報道特番はやる。緊急事態宣言の時にもやりましたし…。必要というか、ニーズ、これはうちがやるべきだろうという風に認識をすれば、やりますよね」とキッパリ。テレビ東京の“伝説”とは、明確な意図と意義のなせる業だった。

デイリースポーツ2021.01.28
https://www.daily.co.jp/gossip/subculture/2021/01/28/0014037110.shtml