「木村演じる万次は”血仙蟲”を埋め込まれ、不死身の肉体を手に入れた用心棒。三池監督は『不老不死の死なない男と、永遠にトップアイドルとして生きなければならない木村とはリンクする。人は殺さないけど木村拓哉も”無限の住人”』と話せば、木村自身も『毎日エネルギーを全て出し切らせてくれる。くたくたになれるキャラクターで眠ることもできた。非常にバランスのとりづらい私事があった中、この役と作品がなかったら厳しかった』と当時を振り返っています」(制作会社プロデューサー)

映画の冒頭に登場する荒くれ者に囲まれながら大立ち回りを演じる100人斬りのシーンは、特に目を惹かれる。死闘を繰り返し打撲や切り傷に加え、右膝の靭帯損傷を抱えながら木村は撮影に臨み、カットがかかるとその場に崩れ落ちた。木村の脳裏にはその時、一体何がよぎっていたのか。

日曜劇場『グランメゾン東京』(TBS系)で共演した沢村一樹は、「窮地に立たされた時からが木村拓哉」と木村の凄みを評している。人は生と死の間で覚醒する。木村拓哉は50歳を前に、三度目覚めようとしているのかもしれない。

文:島右近(放送作家・映像プロデューサー)
バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

FRIDAYデジタル