阿部二軍監督だけではなく、日本の場合はスター選手が引退するとそのままコーチや二軍監督、場合によっては一軍監督といった重要なポストに就くケースが少なくない。周囲に経験のあるコーチを配置することで、勉強してもらおうという狙いはあるとはいえ、最低限のコーチングの知識などは学ぶ必要があるのではないだろうか。

 そのような声は確実に大きくなっており、当の巨人も少しずつ体制は見直されているように見える。

 今季から二軍のヘッドコーチには、韓国での指導経験が豊富な金杞泰が就任した。また、三軍監督に就任した二岡智宏は巨人のOBではあるが、現役引退後は一度ユニフォームを脱ぎ、業務委託という形で国際部の外国人選手調査にかかわったほか、BCリーグの富山で監督を務めるなど指導者の経験を積んでいる。

 原監督自身も指導者経験は巨人一球団のみだが、現役引退後は一度解説者として活動した経験がある。同じ球団でユニフォームを着続けるよりも、一度外から野球を見ることによって得たものも大きかったのではないだろうか。

 プロ野球の一軍監督という立場は、勉強したから就任できるものではなく、成功する方法も一つではないが、現在のプロ野球界を考えると、現役時代の実績とカリスマ性だけで務めることが難しくなっている。「球界の盟主」の座をソフトバンクに譲り渡したとも言われる巨人。その復活に向けて、どのような決断を下すのか。原監督退任後の最大の注目ポイントと言えるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月18日 掲載