スーパースターで、芝居もうまくて、後輩に尊敬され、スタッフに愛され、家庭も円満。そんな真っ当すぎる人間は、社会貢献に勤しむセレブとしては相応しいが、体を張って人を楽しませるアイドルとしてはつまらない。というより、アイドル失格でさえある。ヲタは、夢が見たいのだ。変身する自担(推し)が見たいのだ。自分にだけこんな顔を見せてくれたと(それがまやかしだと分かっていても)錯覚したいのだ。

妻が理想とする夫さえも演じようとする木村に、そんなファンタジックな要素はない。悪戯に経験を重ねてしまった我々ヲタの人生は、公私共に満たされてしまったアイドルの魔法に簡単にかかるほど、生ぬるくはないのである。

取材・文:喜久坂京
ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。