1/14(木) 9:26
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南海キャンディーズ山里亮太は努力の天才 “お笑い偏差値”の低さを凄まじい努力で補った
南海キャンディーズの山里亮太(C)日刊ゲンダイ
【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】

 南海キャンディーズ 山里亮太

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 去年、世間を驚かせた結婚といえばナイナイの岡村君。その前年、もっと驚かせたのが南海キャンディーズの山ちゃんでした。この年末年始もMCにナレーションにと大活躍。結婚してまさに女神を手に入れたようです。

 入籍が報道された際、「結婚おめでとう!」のメールを入れたところ、折り返して「先生に事前にご報告できずにほんとに申し訳ありません!」とこちらが恐縮する電話をくれました。私だけでなく、山のように来たであろう祝福メール全てにお礼の返信をしたのでしょう。こういう律義でしっかりしたところも、蒼井優さんが結婚を決められた大きな要因ではないでしょうか。

 山ちゃんは31年の講師生活で唯一「大阪校では厳しいと思うから東京に編入させてもらい」と“失格”の烙印を押した生徒でした。なぜかというと、千葉県で育ち“関西弁が全く話せない”という大きなハンディがあり、当時は明らかに“お笑い偏差値”が低かったからです。いわばマイナスからのスタート。それを元来の頭の良さもあると思いますが、努力に努力を重ねて、紙オムツのマジック吸収体のようにお笑いの方程式を吸い取り、ドンドンその引き出しを増やしていった。毎回の授業で、メモを取り続け、時間の許す限り質問をしてくる。授業態度は真剣そのもので、その熱意は凄まじいものがありました。

 NSCを卒業してから数年後に蒼井優さんとのキューピッド役にもなった、しずちゃんという得難い相方と出会い、これまでの男女コンビとは明らかに違う形の漫才を作り上げ「M―1グランプリ2004」で準優勝。瞬く間に全国区の人気を獲得したのはご存じの通りです。

 ある日、私がアドバイザーをしていた若手の劇場「baseよしもと」の楽屋で山ちゃんの大きなカバンを持ち上げたら、その重いこと。

「なに入ってんねん?」と尋ねると、カバンを開けて中を見せてくれました。そこには「政治」「経済」「外交」などさまざまなジャンルの文庫からハードカバーまで本が7冊。「こんなん持ち歩いてんのん?」と驚く私に山ちゃんは真顔で、「先生、さんまさんや紳助さんに『山里どうやねん?』て聞かれた時に答えられないと、僕の席(レギュラー)なくなっちゃうんです。人生でいまが一番勉強してると思います」。

 すでに人気を不動のものにしていた山ちゃんの言葉に衝撃を受けました。

 それからしばらくして出会った際に「メモはしっかり取ってるか?」と聞いた時にも「はい、食事をしてる時におもしろい話を聞いたら、トイレに行って忘れないうちにスマホにメモしてます」とその姿勢に変わりはありませんでした。それが「スッキリ」のあの“天の声”での当意即妙なコメントにつながっていると思います。山ちゃんが「天才はあきらめた」という文庫を出版した時、メールで贈った言葉は「君は努力の天才です!」でした。

 奥さんがかすがいになって、キューピッド役をつとめてくれたしずちゃんとのコンビの絆もより強くなった山ちゃん。地道な努力が一番の近道だと山ちゃんを見るたびに思います。

(本多正識/漫才作家)

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