【佐藤弁護士】プロデュース契約等の中には、企業側に対して「タレントのイメージを損なうような言動をしてはならない」等とイメージ保持義務を課している場合があります。そのため、“プロデュース”という名目で、タレントの名前を使って商品の魅力を訴求しているにもかかわらず、その商品が模倣品だったり欠陥商品だったりして、タレントの評価や信用を毀損した場合には、タレントの評価や信用を傷つける行為として、企業側はタレント側から損害賠償を求められる可能性はあります。

■返金対応は、法的な対応ではなく企業としての“経営判断”

――上記とは別に、商品に関係する事実を隠してバストケア商品をプロデュースしていたてんちむさんの一件のように、プロデュースの契約でタレント側が商品のイメージを毀損した場合、どのような問題が生じますか?

【佐藤弁護士】プロデュース契約等の中には、タレントに対しても「企業・商品のイメージを損なうような言動をしてはならない」などイメージ保持義務を課している場合があります。そのため、タレントが商品のイメージを損なうような言動をした場合には、契約違反等になります。

――タレント側が商品の返金義務を全て負うことは妥当なのでしょうか?

【佐藤弁護士】それは妥当でないと考えます。もちろん、タレントが任意で全ての返金義務を負うことには何ら問題ございませんが、基本的には、タレントだけが法的に全ての返金義務を負うことはございません。どのようなトラブルかによりますが、本来は、消費者に対する一次的な責任を負っているのは、企業側となります。

――商品の本質に欠陥がなくても、消費者への返金対応が妥当なのでしょうか?

【佐藤弁護士】返金対応をするかは法的な対応というよりは、企業としての経営判断になると思います。仮にタレント側が商品に関する何らかの事実を隠していたとしても、商品の本質である機能については何ら欠陥がないとすれば、原則として、その売買契約を解除等することが難しいと考えます。もっとも、そのタレントの宣伝方法に明らかな虚偽内容があれば、それで誤解して購入したというケースもあり、そういった場合には、売買契約の解除等ができる可能性があります。

――インフルエンサーマーケティングなども盛んですが、「タレントのプロデュース商品」と「タレントのオススメ商品」の違いは、消費者はどのように考えればよいでしょうか?

【佐藤弁護士】前者は、タレントがその商品のデザインや色などに監修も含めて関与している場合であり、後者は、そういった関与はしていないが、自分が使用等をした経験からおススメしている商品であると考えるのが良いと思います。