そしてもうひとつ、この動画には重大な問題がある。ブラジルではコロナの死者は20万人を超え、年が明けても1日当たりの死者数が1000人を超す日が続いている。しかし、このパーティーでは誰ひとりマスクをしていないのだ。

◆エメルソンはサルを連れて練習に。横浜で完結した壮絶サッカー人生>>

 動画がアップされたのが日曜日の夜。そして1日たった月曜日にはブラジルのキー局『グローボTV』のゴールデンタイムのニュースで流されるまでのスクープとなっている。ネットでも「本田 送別会」と検索すれば、数多くがヒットする。いまや、ブラジルサッカーにはこの話題しかないかのような騒がれ方になっているのだ。

『スポーツTV』のジャーナリストは番組で本田をこう非難した。

「ボタフォゴがセリエBに落ちると絶望している時に、若い選手を引き連れてパーティーをするなんて、なんて勇気の持ち主だ。どこからこういう考えが生まれるのか、教えてもらいたいぐらいだ。結局チームのことなどを何も考えていないから、できるのだろう」 

 ボタフォゴ幹部も「外国人選手にこんな扱いをされたのは初めてだ」と嘆く。出ていく本田は関係ないかもしれないが、その他の5人の選手は、間違いなく何らかのペナルティを課せられるだろう。チームメイトたちは彼らのことを快くは思わず、チームが割れる危険もある。成り行き次第では、5人はチームを放出される可能性さえあるだろう。

記事を載せた「FOGAONET」には、ツイッターだけでもほんの数時間で2500以上のネガティブな意見が集まった。これまでになかったことは、サポーターの怒りがチーム以上に本田自身に向かっていることだ。

「本田はまるでギャグマンガのようだ。ヒーローとして来て、結局1試合もいいプレーをしなかった」「君をあんなに好きだったのに、どうしてそんなひどいことができるんだ」......。

 同じ言語であるだけに、本田が新天地に選んだポルトガルにもこのニュースは伝わっている。彼はポルティモネンセでプレーする前から、ネガティブなイメージを持たれてしまう可能性が十分にある。

 コロナ、リオの暑さ、そして混乱して弱く金もないチームに、本田はほとほと嫌気がさしていたのだろうか。ブラジルを去れることが心から嬉しかったのだろうか。動画の本田は笑っている。この10カ月で彼のこれほどの笑顔を見たのは初めてだ。

 だが、真のプロフェッショナルが、34歳の一国を代表するような選手が、することではないのは明らかだ。